生薬の話 『枳実(キジツ)』

 枳実は、ミカン科のダイダイ(Citrus aurantium L.、酸橙)やカラタチ(Poncirus trifoliate Rafin、枳、枸桔)などの未熟果実です。枳実の枳という字は、諧声の字(音声を表す文字と意味を表す文字を組み合わせて新しい意味を表す漢字)で、木の意味と只(シ)の発音の合字です。 和名のダイダイは、代々という意味で、果実が年を越してもなお枝についていて、新しい果実が実ると旧果が落ちるからと言われています。また、カラタチは、カラタチバナ(唐橘、韓橘)の略された形で、中国から渡来したタチバナの意味です。

 シトロンは、旧約聖書に登場する「禁断の木の実」であったという説があります。諸説はありまして、17世紀にリンゴとして定着するまでに、柑橘類、特にシトロンは有力でありました。しかし、聖書がラテン語に翻訳された際に「善悪の知識の木」を「de ligno autem scientiae boni et mali」と表記したところ、悪と同じ綴りのリンゴ(いずれもmalus、属格はmali)と読み違えられ「善なる知識の木とリンゴ」と解釈されたため、禁断の果実はリンゴであると誤解されたまま流布されたといわれています。

枳実は、滞った気を破る働きがあるので「気実」と覚えると分かりやすいです。胸腹部のつかえ、膨満感のあるものに用い、芳香性健胃剤としてよく使用されます。気の鬱滞を通じるようにし、陽証の腹部の緊張を和らげます。

少し専門的になりすぎました。すみません。

虎の色と言えば?


お年玉年賀はがきの当選番号が発表されましたね。いかがだったでしょうか?2021年のディズニーの年賀はがきはプーさんが牛の雪だるまを作っていて、2022年の年賀状は虎のティガーがその雪だるまに勢いよく突っ込っこんでいるデザインだそうです。ティガーと言えばオレンジ色ですよね。日本で虎と言えば黄色のイメージが強いですが、実際にはオレンジだそうです。どうして虎がオレンジ色をしているのでしょうか?実は虎の獲物になる草食動物が、虎を見つけにくいようにです。先日、「ダーウィンが来た!」知りました。人間の目のセンサーが光の三原色に対応する赤・緑・青の3種類なのに対し、鹿などの草食動物は緑と青のセンサーなので、オレンジと緑を見分けにくいそうです。

これを知って考えたことは、鹿はみかんを食べることはないのだろうかということです。みかん農園のホームページによると、果実を食べるのではなく、みかんの木の新芽や樹皮を食べるます。そして、鹿に食べられた木は弱ってしまいます。それは果実を食べられるより大変です。だから害獣駆除が必要になるのですね。「サラメシ」で知ったのですが、鳥取県庁食堂では、火曜日に隔週で鹿カレーと猪カレーのジビエカレーが食べることができるそうです。鹿肉はもみじ、猪の肉はぼたんと呼ばれることがあります。徳川綱吉の生類憐みの令により肉食が禁止されたことにより、別名があるそうです。猪の肉は昔は山くじらと呼ばれていました。鹿がもみじと呼ばれるのは百人一首5番からという説、花札から来ている説があるようなのですが、牡丹の花札に描かれているのは蝶で、猪の花札に描かれているのは萩だそうです。猪の肉がぼたんと呼ばれるのは猪の肉を牡丹の花の形に並べて出したところからきているようです。牡丹の花札は6月札ですが、花札は旧暦で作られているので季節が合わない気がします。

色もそうですが、同じものを見ていても、見えていなかったり、人によって違うように見えることありますよね。たとえば富士山は見る角度によって形が違います。相手の視点に立ったとき、相手の言っていることも正しいことが分かったりすることがありますよね。
みかんの皮は陳皮、牡丹の根は牡丹皮という生薬です。陳皮は抑肝散加陳皮半夏、六君子湯に入っています。そして猪膚(ちょふ‥猪の皮膚)は傷寒論に少陰病下利咽痛胸満心煩者猪膚湯主之とあり、咽が痛いときにいつか試してみたいと思っています。


目の病気の症例はこちらをごらんください。写真は麦門冬です。