弱い胃腸と不妊の関係

大人になってからは胃腸の強さが物をいう

「赤ちゃんが欲しくて病院であれこれ検査したけれど、どこにも異常はない。なぜ妊娠できないの?」とお悩みのかたの中には、胃腸が弱い人が多いようです。もちろん、下痢しやすい、便秘

しやすい、胃が重苦しい、胃痛があるなどのわかりやすい症状があれば、自分でも胃腸が弱いと自覚されるでしょう。しかし、現代人には、自分では健康体だと思っていても実は胃腸が弱っ

ているというケースも多いのです。こんな症状はありませんか? やせぎみ、たくさん食べても太らない、ゲップが出やすい、胃がジャポジャポいう、乗り物酔いしやすい、食事をしたあとも体が冷える感じがする……。胃腸が丈夫であれば、食後は体があたたまる感じがするもの。これらの症状は、胃腸が弱りぎみのサインです。漢方には「先天の腎、後天の脾胃」という言葉があります。先天の腎というのは、親から与えられた生命力。子どものうちは持って生まれた腎の強さ

で元気に過ごせます。しかし親からもらったエネルギーには限りがあります。年をとって使いきってしまってからは、それを補うのが後天の脾胃。つまり胃腸を強くしていれば、ずっと元気で過ごせる、大人になってからは胃腸の強さが物をいう、と考えるのです。西洋医学の考え方では血液をつくるのは骨髄ですが、漢方では、血液は胃腸がつくると考えます。実際、胃腸が元気になれば白血球や赤血球の値もふえてきます。子宮はたくさんの血液が集まり、血液を必要とする臓器。胃腸の健康と子宮の元気は、密接に関係しているのです。

原因不明で悩んでいるかた、胃腸を見直してください。

胃腸を弱めないために重要なのは、水分を控えること。水分を多くとると胃液が薄まって消化不良を起こすばかりか、胃腸にたまった水が体を冷やしてしまします。

 ストレスをためるのも、よくありません。ストレスがたまると胃腸に炎症が起こり、やはり消化不良になったり、痛みを感じることもあるでしょう。

 生野菜、アイスクリーム、甘いもの、ビールなどの体を冷やす食べ物、飲み物も胃腸にダメージを与えるので、要注意です。

また、胃からは成長ホルモンをコントロールする物質が出ていると考えられています。成長ホルモンは血液をつくったり、肌をつくったり、体の新陳代謝にかかわるとても大事な働きをしお)

ます。さらに胃腸には免疫器官が集まっているので、胃腸が丈夫になることで、アレルギーなどの症状が改善することともあるようです。胃腸は一度こわしてしまうと、治すのに時間がかかりますが、漢方はこの 胃腸を元気にするのが大得意。「基礎体温も問題ない。ホルモンの検査などをしても、どこにも異常がないのに、なかなか妊娠しない」というような方は胃腸が弱っているかもしれません。一度漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。

胃腸が元気になった結果、体調もととのい、自然に妊娠 今回ご紹介するのは、結婚して2年になる30才の女性。これまで人工授精3回、体外受精1回の経験あり。基礎体温は問題なし、体格は普通、かなりの冷え性で手足はいつも冷たくて生理痛もひどく、下痢しやすいそう。そこでまず、自家製無農薬当帰と芍薬を使った漢方煎じ薬を飲んでいただきました。3カ月で生理痛が楽になり、下痢も解消。かなり調子はよくなりましたが、長年の頭痛がまだあるとのこと。このかたは甘いものやアイスクリーム好き。そうした食べ物が胃を冷やしている可能性がありました。実際、お話を伺うと胃もたれや胃痛があり、頭痛は吐くほどひどく、週の半分以上は頭痛薬を飲んでいるそう。そこで胃をあたため、胃の中の悪い水分を除く漢方薬を処方。すると頭痛も楽になり、1カ月後に自然妊娠されました。このかたのように胃がよくなった結果、体調も改善し、妊娠するというケースは多いものです。漢方の考え方に「エネルギーも血液も水もめぐっていなくてはならない、滞ってはいけない」というのがあります。今回の例は胃が冷えて働きが悪くなった結果、胃に水毒がたまり、頭痛がしたのでしょう。

体温が高いだけでは妊娠しない?

 日本の植物の多くは、春に種まきをします。植物の種をとってすぐ、秋に種まきをする場合は種を冷蔵庫に数日間入れて「冬越し」をさせます。なぜかというと植物の種はいったん低い温度の冬を経験しないと、きちんと発芽せず腐ってしまうからです。
人間も同じで、排卵する前にきちんと体温が下がることが大事! 基礎体温は高温期があり、温期があり、排卵日に体温がいったん下がって、また高温期に……というリズムで変化します。しかし不妊でご相談にいらっしゃるかたは、こうした基礎体温のメリハリがないことが多いのです。特に体外受精をなさっているかたは、おそらく薬の影響だと思うのですが、高温期だけということも少なくありません。また、仕事などさまざまなストレスがあると交感神経が優位になります。交感神経が優位だと毛穴は閉じ、血管も閉じぎみになるので体内に熱がこもり、体温が上がりっぱなしになります。
逆に副交感神経が優位になると、毛穴も血管も開いて熱が体外に出て、体温が下がります。基礎体温にメリハリをつけるためにも、この交感神経と副交感神経のスイッチの切りかえがじょうずに行えることが大事です。
体温にメリハリがないかたには、乾布摩擦がおすすめです。乾布摩擦は交感神経・副交感神経の切りかえをスムーズにするよい刺激になります。また、冷暖房に頼りすぎず、自分の体が持っている力で体温調節できるようにするのもよいでしょう。

食事、運動、オンオフ、生活全般にメリハリを
現代人の多くは「正午になったから、そろそろ昼食だ」というように、時間を目安に食事をっているのではないでしょうか。仕事の都合などである程度はしかたないかもしれませんが、できれば食事は本当におなかがすいたときにとってほしいと思います。本当に空腹であればおいしく食べられますし、ホルモンや生命力をアップさせる物質などもよいタイミングで分泌されます。
そしていつもお話しすることですが、運動も大事。動くときはしっかり動いて、休むときはきちんと体を休めてリラックスしてください。
体によいとされていることでも、あまり無理をしすぎる、極端に走りすぎるのは心身を緊張させるので、よくありません。不妊治療をがんばりながら趣味を楽しむ、平日は仕事で忙しいなら休日は好きなことにチャレンジしてみる、など日常でも交換神経と副交感神経がうまく切りかえられるような、メリハリのある生活を楽しめるといいですね。
人間は陰と陽、虚と実の間を常に揺れ動いているもの、と漢方では考えます。どちらかに留まる・傾くではなく、陰に近いときもあれば、陽に近いときもある、とメリハリのある生活を送ることが大事なのです。