西洋医学で治りにくい病気こそ“漢方”の出番です…皮膚病、不妊症、癌、膠原病など

むつごろう薬局「自然の漢方薬で赤ちゃんはきっとできる」

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むつごろう畑の近況報告

二階堂東邦大学名誉教授から、なつめの実が届きました。国産の完全無農薬のなつめです。実は小さいのですがとても香りが強く美味しそうです。


むつごろう新聞

トピックス情報

漢方音楽が、出来上がりました。作曲家の小松正史さんと作りました。2018年12月7日にリリースされます。むつごろう薬局・むつみ薬局・京都にて数か所で同時販売致します。ご予約を受け付けています。


ノルウェーからのお便り
紫雲膏
むつごろう八選茶

漢方勉強会無門塾発表 (2013年4月12日 北里大学)

2013年04月17日

お米のご飯と漢方薬は炊(煎)いて始めて味(効)が出る

炊(煎)くということ

四ヶ月の間陰干にした当帰を、42℃のお湯で洗い整えて(湯もみ)、乾燥機に入れて8時間ほど経つと表面だけが乾いて中に水分が残る。握ってみるとスポンジ様触感で、まだ中に水分がたくさん残っている。その37時間後ちょうど良い具合に乾燥が仕上がる。梅の花がほころぶ頃、暗い早朝からの作業は寒くて辛いが、それよりも睡眠不足のほうが体に堪える。最初は乾燥機内の湿度を調節するのに手間がかかるからである。しかしこの作業如何で生薬中の有効成分が決まるので手が抜けない。

生薬の乾燥は、当然ではあるが表面から少しずつ乾いていくのでその有効成分は中へ中へと移動する。(エキス含量を少しでも高めるためなるべく温度を上げ過ぎずに時間をかけてゆっくり乾かす。)切断面の色は中心に行くほど濃くなっていくのでその様子がよく分かる。 漢方薬を炊(煎)くということは、生薬の奥のほうに集約された有効成分をより確実に抽出するためである。45時間かけて閉じ込めた成分を、土瓶の遠赤外線効果を活かし生薬の奥のほうまで熱を加え、あまり激しく沸騰させないように1時間かけてゆっくり取り出していく。浮かび上がる灰汁を何回もおたまで取り除くと味も大変まろやかになる。息子のウィルス性腸炎に黄芩湯加半夏生姜が劇的に効いたのは、人の手で心を込めて作り上げた煎じ薬だからであり、はたしてエキス剤ではどうなっていたであろうか。

煎じる過程で複数生薬が土瓶の中で滞留し熱の力を借りて新しい物質が作り出される。生薬の相乗効果によって予想外の効果を発揮する成分となる。そして、その成分が体内に入ると生化学的な拮抗作用によって有効に作用する。例えば「附子は体を温める」というが、生体防御反応に働きかけることにより(附子の毒を外に追い出そうとして)心拍を速め、血流が良くなりその結果体温上衝するのである。また、傷寒論厥陰病の病勢は、危篤の証であり体の新陳代謝は極端に落ち冷え切っている状態である。この時登場する通脈四逆湯の主役は附子と乾姜で、胸中を温め起死回生を狙うが、四逆湯と比較してみると附子の量は同じで乾姜を2倍にしている。「厥逆」に臨むこの方は附子・乾姜の相乗効果によって温める効果を倍増していると言える。

煎じ薬は水で煎じるが、私が汎用する当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、原典に従って水と清酒を半分ずつで煎じると、よりからだが温まりやすいといわれることが多い。味の賛否は分かれるが、不妊症の方は妊娠の為にできるだけ頑張っていただいている。銘柄をよく聞かれるが、どれでも良いが、「辛口はよく散じ、甘口は中に居て緩やかで」と答え、甘口か、辛口でと言っている。酒煎する方は、栝楼薤白白酒湯、栝楼薤白半夏湯、炙甘草湯、芎帰膠艾湯がある。煎じ薬を調合し、お出しすることは、患家、その家族と一緒になって病に立ち向かうという心の繋がりを持つことができる。そのことは料理でも同じで、家族のために心を込めた料理は家族がひとつになりそこに笑いが多くなる。まさに「笑う門には福来る」である。田畑先生宅での勉強会で奥様に作って頂いた大豆ご飯が大変美味で、いつも塾生に力と元気を与えてくれた。私も挑戦したことがある。研いた米3合に少し焦げ目がつくぐらいの乾燥大豆を50g入れ、お酒と自然塩を少々入れて炊き込む。美味しい「大豆ご飯」出来上がりである。見た目はいまひとつではあったが、子供たちも喜んで食べたことを思い出す。

味(効)を出すための生薬の作り方、見極め方

生薬の作り方

昨年は2回目の芍薬の収穫の年となった。芍薬は5年で収穫であるから、10年で2回しか収穫ができない。気が長くなる話である。以前に、収穫した芍薬を乾燥原料にするまでの奮闘記を漢方の臨床に書いたことがある。以下その一部を紹介させて頂く。

「大学で1700Kgの大和芍薬を頂いたのが2003年10月。1袋25kgの芍薬70袋を作業場に入れるのも大変な作業であった。この芍薬は、12、3年経っているということで、根の太さはなかなかのものである。出刃包丁で何とか2つに切り開くと中は’あんこ’でいっぱい。あんことは、中心部が腐り黒く鬆になることである。収量を増やす目的で、あんこも綺麗にくりぬく。芍薬の表面を軍手で拭きながら、一本一本確認していく。もうすでに母根には来年に向けて鮮やかな赤い芽が出始めている。多いと一株で10本以上はある。赤い芽を3個ずつ残して株を分ける。

(その後、株分けしたものは畑で畝幅、株間を約1mずつ空けて、植えつけていく。) 1袋が終わるのに3時間の仕事。全量で800Kgとなる。師の知恵を拝借して、明石からたこ洗い機を購入し、一回で約50Kgの芍薬と、川砂利と川砂を5Kgずつ入れて、芍薬がちょうどつかるぐらいの水を引き、30分回転させる。30分後、ふたを開けるとまるで洗剤を入れたように泡でいっぱいである。その中から顔を出した芍薬は、まるで別人のごとく真っ白。赤茶けた芍薬の変貌ぶりは、あたかも血に働く能と、真っ白な筋肉を和らげる能を兼ね備えていることを教えている。 日本薬局方の中の芍薬試験方法には、乾燥減量とペオニフロリンの定量法があり、乾燥減量では14%以下で、ある程度の乾燥が求められるが行き過ぎるとペオニフロリンの定量に影響する。赤外線水分計を使い、乾燥機の温度を35℃から50℃に少しずつ上げ24時間、45時間、57時間乾燥したものを測定。結果、18.7%、5.9%、5.6%の水分量となった。トータル57時間のものを採用して作業を進めた。乾燥機を使って山積になっている芍薬を約4Kgに小分けしてステンレスの箙に1本ずつ重ならないように引きつめていく。乾燥機に点火してから乾燥機内を1時間に5℃のペースで少しずつ温度を上げ、55℃で一度停止させる。芍薬の芯の水抜きの為である。少しずつ温度を上げていくのはペオニフロリンの揮発を極力防ぐためである。また、始めの1時間は乾燥機のダンパをいっぱいに開き、120Kgの芍薬からの蒸気による急激な温度上昇を防ぐ。乾燥機の温度設定と、ダンパの開閉、吸気口の開閉具合で、仕上がり具合が大きく変わる。特にダンパの開閉は始めの4時間が大切。また、吸気口を思い切って広げると乾きはよいが、灯油がすぐに底を突き灯油代が馬鹿にならない。逆に吸気口を閉めすぎると、乾きが悪く、1月であっても雨後は、気温が上がり湿度が増す為カビが生え始める。三日三晩、乾燥機を動かし四苦八苦した後やっとの思いで乾燥工程が終了した。最終工程は粉砕。粉砕機の目の大きさは、直径20mm。比較的大きなモーターを積んでいるので、歯に芍薬がぶつかる音が大変大きく、耳栓は欠かせない。目詰まりに気をつけながら、進めていく。 収量320Kg、収率が乾燥前の約40%の少し乾燥気味の芍薬が出来上がった。乾燥した芍薬を少し噛んでみた。はじめ甘く、後渋さと苦味が口の中に広がる。湿気を吸わないビニール袋に乾燥剤と脱酸素剤を入れて密封し茶箱に入れた。」

生薬の見極め方

「冬に根をとって粗皮を去らず、日光にて乾燥したものを生乾と申します。所謂赤芍であって、太さ指のやうに能く肥つて硬く、外皮淡紅色を帯び内部白色を、呈せる長い棒状をなしてある味の苦く渋いものがよろしい。細いものや、短く折れたものや、内部の褐色に変じたもの及び虫食ひのあるものはいけませぬ。白芍と申すものは冬に根を採り直ちに粗皮を除いて、沸湯の中に投げ入れて煮沸すると、湯が黒色を呈するやうになります。それを引き揚げて乾燥したものでありますから効力は弱くなつてあります。」と言っている。

大棗

皺紋の少ない内部黄白色の核の小さな、果肉の多い丸いもの。【圓様(まるでよう)】硬く皺の多い果肉の少ないもの、長いもの【長様(ながでよう)】は良くない。

桂皮

皮の厚い重みのある裏の紫赤色の油分の多いもの。味は辛く甘い香気の少々激しい品が良い。裏面の黒味を帯びたものや、朽ちて辛味の抜けたものは劣品。皮が薄くても色合のよい辛味の強いのは用いてよい。  生姜 肥大に発育してある、内部の白い味の至って辛い香気のよい新しい母根(古根)が良い。暗黒色を帯びたものや、瘠せて細いものや、若根(わかね)や、しなびたものはいけない。1片を二分五厘(0.9375g=約1g)とする。

【1厘=0.0375、1分=0.375g、1匁(もんめ)=約3.75g、1両37.5g、1斤600g(斤=16両)  ※漢書律歴志によると漢の時代の1両は今の2.5匁(約10g)としていた。薬物を測るときは、八百屋が測る1両の10分の1と、名医別録が言っている。尾台榕堂も類聚方広義1両=2.5分とある。】

甘草

太さは鞭位で、皮が薄くて赤味を帯びその破折面が鮮黄色で質の堅いしまっている長くて真直な極めて甘いものがよい。これは南京甘草と呼ぶもので、根の肥大な、皮部の粗い、内部淡黄色を呈するものは福州甘草。大抵根の大小にかかわらず、味の甘い内部の黒く朽ちないものや、茶褐色に変じていないものを選ばなければならない。然し色相がよくても余り細いものはいけない。亦その直径一寸位の太さで、よくしまってある、横断面の紋理の鮮やかなものは李時珍が紛草と称えもの。

(和漢薬の良否鑑別法及調製方 一色直太郎)

中略

まとめ

東アジアにおける伝統医学の国際標準として、中医学が妥当であるかを検証する技術委員会(TC249)が国際標準化機構(ISO)のなかで立ち上がったそうだ。これが認められれば日本漢方は亜流とされ衰退の道をたどるようになる。規格外は将来必要性が少なくなるため、生薬自体も今以上に品質が低下する。これではまずいということで、日本伝統医学を標準化する動きが出ているが、日本伝統医学自体が統一されていないので漢方薬に関しては148処方について証の根拠、腹診、舌診などの標準化を目指しているとのこと。また、不安定な自然な生薬を用いるため、成分がどうしても安定しない。薬の安定さをアピールするためにエキス剤で日本の漢方薬の国際標準化を目指す動きもある。当に、日本伝統漢方の危機であり、漢方薬局の危機でもある。ただ、明治維新の医療改正で息の根を止められそうになった漢方医学が、少数の素晴らしき漢方医、伝統薬の継承者、漢方薬局によって大切に守られ今ここにある。漢方薬が三千年に渡り絶えることなく継承されてきたのは、よく効くからであって理解不明の標準化システムや、マネイジメントが優れていた訳ではない。繰り返すが理由はシンプルで、「効果があるから」でしかない。西洋医学では長きに渡って治らないものが劇的に変化させてしまう場合があるから続くのである。私たち漢方薬局はこの基本に返り、煎じ薬を武器として来店されるお客様に集中していくことである。1日1人漢方薬の魅力を伝えていくことである。将来世界から日本漢方を求められるようになるかもしれない。今日本が持っている技術力のように。これが真の国際標準化ではなかろうか。

参考文献:

  • 漢方第三の医学  (田畑隆一郎著 源草社)
  • よくわかる金匱要略(田畑隆一郎著 源草社)
  • 漢法フロンティア  (田畑隆一郎著 源草社)
  • 「和漢薬の良否鑑別法及調製方 一色直太郎著」
  • 傷寒論の薬物の分量について  桑木崇秀著 薬事日報(2011,9,26)
  • 「漢方の標準化へ基盤整備を推進」

静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦