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2019年08月26日

 

医師・薬剤師リレー治験録「間質性肺炎と漢方薬」P801を漢方専門誌に掲載いたしました。

内容は以下の通りです。専門的ですが、ご興味のある方はご覧ください。

間質性肺炎と漢方薬

 

 

 

はじめに

 

 漢方療法によって、間質性肺炎を治療することは大変ハードルが高いものです。その理由が漢方服用により間質性肺炎を併発してしまう場合があるからで、証を見て注意深く選んだ漢方薬でもその危険性があります。ましてや、効果が鋭い古方漢方では尚更です。大豆アレルギーや蕎麦アレルギーのように食べて見てわかるもので、以下の症例1,2に於いては、慎重に慎重を重ねた結果の薬方で、運良く功を奏したものです。ただ、これをきっかけにして新たな可能性に挑戦していくことも大切と考えています。

 

 

薬局漢方製剤中の「使用上の注意」に間質性肺炎が書かれている処方

 

黄連解毒湯、乙字湯、牛車腎気丸、柴胡加竜骨牡蠣湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、柴苓湯、三物黄芩湯、潤腸湯、小柴胡湯、小青竜湯、辛夷清肺湯、清心蓮心飮、大柴胡湯、麦門冬湯、半夏瀉心湯、防已黄耆湯、防風通聖散、補中益気湯

 

 

 

 

 

症例

73歳男性、身長169㎝、体重70Kg。

2年前に間質性肺炎と診断される。現病歴は、リウマチ、前立腺肥大、糖尿病(HbA1c6.9)

 

(病院の検査結果:KL6 1023、HBC抗体(+)、HBC抗体実測値26.4、CRP 0.56(正常値1未満)、RF30(正常値20未満)、CK225(男性の正常値40-200)、IgG 2069(正常値800-1700)、CH50 56.7(正常値25-48)、MMP3 140(男性の正常値36-120)、血液中酸素量 94-95:単位省略)

(間質性肺炎の検査項目で必要な指標は、KL-6です。正常値が500以下)

 

自覚症状は、倦怠感、むくみ、イライラする、足の冷え、風呂が短い、右手が震え気味、小便多い、夜間トイレ2回、光が眩しい、臭いがわからない、唾がよく出る(粘りのある黄色)、息切れ、ガスがよく出る、足がよくつる、腰の脱力感、血圧(120,75)。舌は湿潤した微白苔で中心部に裂紋あり。

既往歴としては5年前の狭心症で、ステントを三ヶ所入れている。

家族歴は、母親、姉がリウマチ。

 

桂枝加厚朴杏仁湯と八味丸(60丸/分3)で1ヶ月服用、KL6が427、CRPが0.12となり、酸素量96になる。

2ヶ月服用後、CRPが0.37となり、酸素量97、CK104になる。全体的な痛みはあり、だるさは同じで、鼻水、痰が多い。足がむくんでいる。尿蛋白+2。

3ヶ月服用後、潜血±、尿蛋白+3、IgG 2201となり、腎臓の病院で確認。様子を見る。

4ヶ月服用後、CRP 0.66、KL-6 277、HbA1c 6.0、RF17。レントゲンの結果は正常となる。

5ヶ月服用後、尿蛋白+3アルブミンが3.5が続き、桂枝加厚朴杏仁湯を五苓散料に変更。翌月には、尿蛋白+1となり、その他の検査データは異常なし。現在継続中。

 

 

症例2

68歳男性、身長165㎝、体重45Kg。

2年前に間質性肺炎の疑いと診断される。

 

(病院の検査結果:KL-6 1038、CRP 0.56、血液中酸素量93-94:単位省略)

 

自覚症状は、咳、息切れ、血圧(110、60)大便1日1回、小便5回、夜間1回、口渇。

既往歴は、10年前の悪性リンパ腫と舌癌。

 

桂枝加厚朴杏仁湯を1ヶ月服用、血液中酸素量 97-98。

3ヶ月服用後、KL-6 1008、CRP 0.09、血液中酸素量 95。

4ヶ月服用後、KL-6 878、CRP 0.04、血液中酸素量 95。風邪を引き体調崩す。食欲が減る。薬方を人参湯に変更し、2か月後にKL-6が769まで下がり、レントゲンの影も減ったが、肺の水が増えていた。その後真武湯変更したが、再び風邪を引き血液中酸素量 94、KL-6が843、CRP 0.68。桂枝加厚朴杏仁湯に戻し、現在も継続中、KL-6が801で肺の影は変わらない。この方の間質性肺炎の原因は、悪性リンパ腫治療の骨髄移植による免疫異常が原因。(Dr.より)

 

 

間質性肺炎の西洋学的な診断

 

 冒頭で間質性肺炎はアレルギー的なものとお話しました。肺は、酸素を取り込む肺胞という小さな組織が多数集まってブドウの房のような形をしています。肺胞と肺胞の隙間を間質といいます。肺炎は炎症の場所によって2つに大別され、細菌などで気管支から肺胞に至る空気の通り道に炎症が起き、化膿して膿が溜まる肺炎を一般的な肺炎と言い、これに対して、間質性肺炎は間質に炎症が起きることを言います。炎症が起きる場所がブドウの房の内側か外側の違いです。よって咳は痰を伴わない乾いた咳が出ます。また、胸に耳を当てると「パチパチ」「バリバリ」という音を聞くことが出来ます。この音は髪の毛を少しつまんで捻る音やマジックテープをはがす時の音によく似ているので「捻髪(ねんぱつ)音」「ベルクロ・ラ音」と呼ばれます。自覚症状は、呼吸困難(息切れ)や咳嗽(せき)が主な症状です。息切れは最初階段や坂道を昇った時に感じる程度ですが、進行すると呼吸不全の状態となり、着替えなどの動作でも息切れが出て、日常生活が困難になることもあります。症状の進むスピードは間質性肺炎の種類によります。特殊な病型を除いて、息切れや咳などの症状が出はじめて、日常生活に支障を来たすようになるまで数年程度かかります。 

 

 

桂枝加厚朴杏仁湯

 

喘家、桂枝湯ヲ作リ、厚朴杏子ヲ加エテ佳ナリ。(傷寒論/太陽病上篇19)

太陽病、之ヲ下シ、微喘スル者ハ、表未ダ解セザルナリ。(傷寒論/太陽病中篇43)

 

先急後緩を優先して、表邪が在るにもかかわらず下さなけばならない急証があり、下剤をかけた結果、その裏証が全く去らずにいるだけでなく表邪と結びついて不和を生じ、その不和によって下した余りの水気が引き上げられ胸中に上迫して微喘する証です。この証は、脈浮弱であり、また、「之を下し」の伏線から、体質的に弱っている、体の中が弱っていると考えなければなりません。

 間質性肺炎は、若者ではなく多くが老人の病気であることから、体力が落ちている方に多いと考えます。このことからもマイルドな作用の桂枝加厚朴杏仁湯が効いた理由になると考えられます。「桂枝湯は本解肌と為す」、解肌とは、だらだらとした汗を、しっとりとした汗に変えて治病することです。成分は、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草です。桂枝と甘草で外邪からの侵入を防ぎ、生姜と大棗、芍薬と甘草で消化吸収して体力をつける。これは「営衛を和する」と言い、この両者を兼ね備えた桂枝湯は特に高齢者に対して、一種の強壮剤的な働きを持ちます。これに、「激しくない喘咳」に働く「厚朴、杏仁」の二味の薬徴を加えたものが、桂枝加厚朴杏仁湯になります。厚朴は、「気を下し満を散じ、喘、胸腹満を治す」働きがあり、杏仁は、「胸部に停滞し上表に迫る裏水を下降し、喘、短気を治し、また滋潤の能もある」。この二味が組み合わさると、「気の上衝による微喘」に働きます。この気の上衝による微喘は喀痰を生じません。症例2,3では、なるべく患家に刺激にならない様に考えていました。そして、間質での炎症は痰を生じず乾いた咳になる理由から桂枝加厚朴杏仁湯を選択しました。

 

 

まとめ

間質性肺炎は、非常に難しい疾患です。その原因もわからず、治療法もステロイドまたは免疫抑制剤の対症療法しかありません。よって、その治療は本当に重篤な場合は、手を出さないか、どうしても漢方療法をお求めの方には、証に従ったとはいえ、副作用情報から間質性肺炎が出ている漢方薬は避け、かつ、少ない日数投与で状態の変化を見ながら慎重に投与していく必要があると考えます。また、漢方薬で間質性肺炎が併発してしまう原因の一つに、「オウゴン」が悪者扱いにされていますが、生育年数が短い(1年)ものを使用することが問題であると私たちは考えています。(野生のものは3-4年のものが使われます。)

 

 

(参考文献)

南山堂医学大辞典

きぐすり曼荼羅        田畑隆一郎著         源草社 

漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社           

漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社

比較傷寒論          田畑隆一郎著         源草社

傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社

 

 

静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦