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この時期、黄金の薬草がそびえ立ちます。これは、おけら(蒼朮)です。春が来るまで枯れても堂々と立っています。この強さが人間の体の胃腸や、水毒を救います。


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漢方医学の専門誌「漢方の臨床9月号」に、論説を掲載いたしました

2018年09月28日

畑の中の三陰三陽(少陽病)

 

少陽病のキーワード

 

口苦、咽乾、目弦、胸脇苦満、往来寒熱、舌白苔、脈は弦、緊、細。表裏間、表的少陽、

裏的少陽、柴胡剤、柴胡・黄芩の二味の薬徴。

 

 

 

はじめに

 

春の彼岸過ぎに蒔いた三島柴胡の発芽は、1ヶ月という非常に長い時間を要した。2本の可愛らしい葉を出した頃は、赤い芍薬の芽も大きく緑色に変わり蕾が膨らみ始めていた。気温も上がり、畑は雑草で一杯になる。野良仕事は専ら成長が遅い柴胡を助けるための雑草引きが中心で、ここを怠ると柴胡が絶えてしまう。その原因は土の中にある。雨が少ないこの時期、植物たちは水を求めるため根をのばす。地上部の成長速度を緩め、地下での水の争奪戦に力を集中させる。元来、根が短い柴胡の形勢は不利で、雑草に覆われてしまうと負け戦さになる。この畑の様子は「傷寒論」で言う少陽病期に似ている。病気の進行が表面上(植物の地上部)は微少に見えるが、実は体内(地下部)で進行している(少壮;さかん)ものが少陽病期である。

柴胡は繊細な植物で、栽培に苦しむ。理由は根が小さい事で、いつも乾燥を怖がっているように見える。柴胡が油を多く含むのは、この恐怖から身を守る為であり、そしてこの精油が人の肝臓を含む胸郭内に溜った汚れた油を溶かし消化器官へ排出してくれる。傷寒論中、少陽病期は病邪との戦いが胸郭内に移り、その結果、胸脇苦満、微熱、口苦、咽乾、目眩などの症状が現れる。病邪の侵入を脇郭内まで許してしまった状況を立て直すため、油と共に病邪を速やかに腸管に流すのが柴胡の役割と考える。 

食養生に「身土不二」という言葉がある。その土地で採れた物を食べると健康になるという事であるが、まさに柴胡で有名な静岡では、柴胡剤で救われる方が多い気がする。また柴胡がよく育つ山々では、温かい海風と、富士山から吹き降ろされる冷たい風と、そしてリン酸分を多く含む火山灰が交差する。柴胡が治す熱状「往来寒熱」は、育った環境から習得した賜物ではなかろうか。

 

「本病ハ、既ニ初発ニシテ陽勢太甚ナル太陽ノ表位ヲ離ルルガ故ニ、反ッテ其ノ病状ハ微少ナルガ如シト雖モ、実ハ、太陽ニ比ブレバ病勢進行シ、更ニ一級ヲ増セル者ナリ。是、本病ニ少陽ノ名アル所以也。」(傷寒論講義:奥田謙蔵著)

 

 

 

少陽病の提綱

 

少陽病ノ病タル、口苦ク、咽乾キ、目眩メク也。

 

傷寒論中の少陽病は、太陽病、陽明病の後に来る。症候や治法は既にそこで多くが述べられているため主に其の病位、病勢を明らかにしているに過ぎない。少陽病の病勢は、積極性で病期は幅広く、虚証は「表」に実証は「裏」寄りとなる。

病邪が、第1ステージ(3日)を潜り抜け、第2ステージ(5、6日)の少陽病期に侵入してくると戦場は胸郭内に移る。胸郭内の臓器は、西洋医学的では肝臓のあたりで、「少陽病期の主症状」は当に肝臓病を患うときに出てくる症状に似ている。太陽病では、発汗させて病邪を外へ押し返そうとし、裏(腸管)まで侵入を許した陽明病期(8,9日)は瀉下させて一刻も早く病邪を追い出そうとする。しかし、少陽病期では、病邪が汗や、便としても排出させることが出来ない場所にいるため、発汗、瀉下は禁忌となる。それ以上侵入させないように、じっと耐えている状態となる。しかし、実際は見えないところで激しいバトルが繰り広げられている。熱状は押したり引いたりの何とも燃え切らない「弛張熱」となる。この状態を少しでも有利にするため、清解(せいかい)」という方法をとる。是が少陽病期における治病原則となる。解り易く言うと、攻めずに防戦して病邪の弱体化を待つ戦略である。戦国時代の豊臣秀吉の小田原城攻めに似ている。

傷寒論で言う「少陽病」は、太陽病(表)と陽明病(裏)の間を埋めるとても幅広い時期である。表的少陽病証(太陽病に近い少陽病証で例えば柴胡桂枝湯、葛根黄連黄芩湯、五苓散)や裏的少陽病証(陽明病に近い少陽病で例えば柴胡加竜骨牡蠣湯、大柴胡湯、柴胡加芒硝湯)という表現もあり、多くの薬方が顔を出す。その主症候は、先ほど述べたように胸郭内の症状が中心で、口の苦味、のどの渇き、めまい、胸脇不快、胃弱、心煩、動悸、心痛、喘咳、弛張熱で、心胸間のわだかまりを除くことが主治となる。「少陽病」の中心となる柴胡剤では、基本的に胸脇苦満があり、疳が強く色黒の子供であれば小柴胡湯。赤ら顔で汗かき短気であれば柴胡桂枝湯。二本棒、ねくらは四逆散。衰廃、臍上悸、渇、頭汗があれば柴胡桂枝乾姜湯。驚、臍上悸、便秘、神経症であれば柴胡加龍骨牡蠣湯。心下急、強実、便秘は、大柴胡湯。古方ではないが胸苦、化膿症、アレルギーの場合は葛根湯証に近い十味敗毒湯となる。また、柴胡剤以外の少陽病期の薬方では嘔吐、悪心は小半夏加茯苓湯。心下痞、悪心、嘔吐、腹鳴は半夏瀉心湯。下痢、腹痛、発熱、渇には黄芩湯。胃弱く、強い疲労感は後世派の補中益気湯。炎症と充血のある古びた熱には黄連解毒湯。顔赤黒く、気分落ちつかず、便秘は瀉心湯。性的神経症、逆上感は桂枝加龍骨牡蠣湯。哭、欠伸、強い煩躁は甘麦大棗湯。衰廃、不眠、貧血は、酸棗湯。立ちくらみ、動悸には苓桂朮甘湯。脈結代、心動悸は炙甘草湯。心痛、咳嗽は栝呂薤白白酒湯。激しい喘咳、渇、汗は麻杏甘石湯。のぼせて空咳は麦門冬湯。吐、便秘は大甘丸。滋潤し便通は麻子仁丸となる。

 

 

 

少陽病の裏の証は厥陰病

 

 傷寒論で言う病の進行状況は、太陽病から始まり少陽病と続き厥陰病で終わる。病位は太陽病期の体表から、少陽病期の胸郭内そして陽明病からは腸内と進行して行く。そして最期の危篤の証、厥陰病期では胸郭内(心臓あたり)に戦場が戻る。前回、少陰病と太陽病は病のステージが同じで、違うのは病毒を迎え撃つ戦闘能力で寒熱の差も大きいと申し上げたが、少陽病と厥陰病も同じことが言える。治病の分水嶺(少陰病)を突破した病毒は激証と化し、それを迎え撃つのは最後の砦、厥陰病のみとなる。そこで起死回生をはかる。一寸の狂いが死を招く状況下では証の取違は決して許されない。厥陰病で比較弁別される薬方は、小柴胡湯、当帰四逆湯、茯苓甘草湯、乾姜黄連黄芩人参湯、白頭翁湯、瓜蒂湯、梔子豉湯の少陽病がほとんどである。厥陰病の主徴は、精力衰脱、体液亡失による口内乾燥及び口渇、胸内苦悶、呼吸の浅表微弱、急激なる心臓衰弱、食欲不能、手足厥逆、脈絶、これに或は嘔噦、吐瀉、頭痛、心痛がある。これに対し少陽病では、易疲労、咽乾、胸脇苦満、少気、心煩、食欲不振、手足厥寒、脈細にして絶せんと欲する、嘔気、嘔吐、頭痛、脈結代となる。

 厥陰病は危篤状態にして救い難いが幸いに良好なる経過を取るときは、少陽病に転じることを最も多いと奥田謙蔵先生は述べている。

 以上により、病のステージが同じ胸郭内であり、比較弁証するべき症候が近い、そして厥陰病から少陽病に転じる流れがある事を理由に少陽病と厥陰病は傷寒論上表裏の関係にあると考えて良いのではないか。

 

 

 

補而後瀉

 

小倉重成先生の潜証理論は、師匠の田畑隆一郎先生からの教えで知った。運動不足、アイスクリームや甘いものなどの陰性食品の食べ過ぎ、冷房の使用、睡眠不足、過度のストレスなどにより新陳代謝が落ちてしまい、証に合っているにも関わらず改善出来ない場合、厥陰病の茯苓四逆湯を午前中に使い、午後に少陽病(太陰病も)の薬方を使用することで目標とする効果の発現は遥かに優れている。また、後に投じる薬方のトラブルも少ない。この考えの元となっているものは鍼灸の「補而後瀉」であるが、少陽病と厥陰病は表裏の関係にあることが前提である。

 

 

 

少陽病期のみに応ずる二味の薬徴

 

 少陽病期に登場する代表生薬と言えば柴胡と黄芩である。柴胡の薬能は、「胸脇部の熱をさます」働きがあり、黄芩(清熱剤)と組んで胸脇苦満、往来寒熱、嘔吐、心煩、生理不順、血熱を治す。また、枳実(循気剤)と組んで心下痞こうを治し、甘草(循気剤)と組んで精神症状を安定させる。芍薬(駆瘀血剤)と組んで腹痛を治し、人参(駆瘀血剤)と組んで心下痞硬を治す。

 また、黄芩の薬能は、「心下の血熱を瀉す」働きがあり血熱とは血液循環が悪くなり血に熱を帯びる状態で、血液が多く集まる心下(肝臓あたり)が熱を帯び易い。よって黄芩の働く場所は中焦の心下であり、働きは血熱を瀉す事と考える。黄芩は、芍薬・大棗・地黄と血剤と結びつくことが多い。また、黄連との組み合わせの黄連解毒湯は鼻血に使われ、地黄との大黄䗪虫丸は乾血と言い陳旧瘀血に働く。また、柴胡との小柴胡湯は経水適断、経水不利と血病との関係がある。以前から、金匱要略にある当帰散になぜ黄芩が含まれるのか大きな疑問であったが、黄芩の血剤と結びつく特性からその理解ができる。また、当帰散の黄芩は芍薬と組み腹中満を除き、黄芩・朮は湿熱を除き貧血を治す(黄土湯)。また、黄芩が含まれる薬方は、駆瘀血剤との兼用は相性が良いのではないかと考える。

 

「柴胡・黄芩」 「柴胡・枳実」 「柴胡・芍薬」 「柴胡・人参」 「柴胡・甘草」 

「黄芩・芍薬」 「黄芩・竹節人参」 「黄芩・大棗」

「枳実・朮」(茯苓飲、枳朮湯)

「橘皮・生姜」(橘皮湯、橘皮竹茹湯、茯苓飲)

「栝呂実・薤白」 「栝呂実・半夏」(栝呂薤白半夏湯)

「石膏・竹節人参」(木防已湯)

 

 

 

 

まとめ

 

少陽病の提綱は、「少陽病ノ病タル、口苦ク、咽乾キ、目眩メク也。」である。この症状は肝臓病を患うときに出てくる症状に似ている。位は太陽病期の体表から、少陽病期の胸郭内、陽明病からは腸内と進行して行く。そして最期の危篤の証、厥陰病期では胸郭内(心臓あたり)に戦場が戻る。少陽病と厥陰病は病のステージが同じで、違うのは病毒を迎え撃つ戦闘能力で寒熱の差も大きい。病のステージが同じ胸郭内であり、比較弁証するべき症候が近い、そして厥陰病から少陽病に転じる流れがある。(少陽病と厥陰病は表裏の関係にある。)

少陽病を代表する二味の薬徴は、柴胡・黄芩で、柴胡は「胸脇部の熱をさます」働きがあり、黄芩は「心下の血熱を瀉す」働きがある。柴胡・黄芩の組み合わせは、胸脇苦満、往来寒熱、嘔吐、心煩、生理不順、血熱を治す。そして、黄芩が含まれる薬方は、駆瘀血剤との兼用は相性が良いのではないかと考える。

(この文章は、2016年63巻7号「太陽病」、2017年64巻9号「少陰病」に続くものです。)

 

 

(参考文献)

 

奥田謙造  『傷寒論講義』     医道の日本社、 1965

田畑隆一郎 『漢方サインポスト』  源草社     1997

田畑隆一郎 『比較傷寒論』     源草社     2007

田畑隆一郎 『漢法フロンティア』  源草社        2011

 

    静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦