「医食同源(いしょくどうげん)」「薬食同源(やくしょくどうげん)」という言葉があります。食べ物と薬は健康を保つために共に大切なものという意味です。そして、食事に気を付けていれば薬は要らなくなるとも言い換えられます。また、漢方医学に至っては漢方薬の成分(生薬(しょうやく))が食べ物と同じという意味です。
例えば、お米の原料の玄米は漢方名「硬米(こうべい)」という名前で、皮膚病や熱中症の漢方薬に含まれますし、`しょうが`は、「生姜(しょうきょう)、乾姜(かんきょう)」という名前になり、胃腸病の漢方薬に含まれます。和食のデザートに出てくる葛餅(くずもち)や葛切り(くずきり)は、なんと風邪の引きはじめに使う葛根湯(かっこんとう)七つの成分(葛根・麻黄・桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草)の主役「葛根(かっこん)」となります。
また、同じ食物ですが、料理で捨てられる部分が漢方薬になるものもあります。例えば、桃や杏の種核は「桃仁(とうにん)」「杏仁(きょうにん)」という生薬(しょうやく)に、かきの貝殻は「牡蠣(ぼれい)」に、みかんの皮は、「橘皮(きっぴ)」という生薬となって病気を治していきます。
そして、同じ植物の中でも場所によって、食べ物と漢方薬に分かれるものもあります。
枇杷の実は果物になり、葉は「枇杷葉(びわよう)」という生薬として咳の漢方薬で活躍します。また、松の実は食品として、松の根に寄生する菌糸体は「茯苓(ぶくりょう)」と言って利尿や精神安定に働きます。そして松葉は戦国時代の籠城における非常食として食用に、また、民間薬として中風や高血圧症として使われていました。(原色牧野和漢薬草大図鑑)
このように、食物の源が、「食べ物」と「漢方薬」に分かれていく様子が理解出来たと思います。美味しいと感じる部分が食べ物に、不味いと感じるものが漢方薬になっていきました。
人間が美味しく感じることは、体が欲求しているもので栄養になるからです。そして不味いと感じるものは、吐きたくなるもので体内の悪いものを外に出してくれます。これが漢方薬の病気を治すメカニズムなのです。体内毒素を外に出し体内を綺麗にしてくれるのです。