戦国武将から学ぶ健康法

令和2年12月18日 静岡市清水区の浜田いきいき大学にて、講演をいたしました。皆さんとは、今年で2年目。今年も皆様方と楽しく過ごすことができました。以下はその感想と、講義内容です。

・戦国武将の健康法を知ることができて日常生活に取り入れたいと思った。
・わかりやすく生活に取り入れやすいお話の内容でとても参考になりました。
・大河ドラマが大好きなので役者さんとダブってみえました。
・コロナに勝つため教えて頂いたことを行いたいです。
・自分の健康を保っていくために参考になった。
・話にテンポがあってたのしく聞けました。
・この頃漢方薬のことを知りたいと思っていたのでよかったです。
・呼吸法、実践したい。
・戦国武将の健康法の講座よかったです。それぞれ自身の健康法をうえに立つ者としてあみだしていたことがよくわかりました。
・イライラしない、すり足で歩く、タオルの足指でひきよせ等できたらやってみようと思います。
・いつの時代も健康は大切。健康維持の大切さを学びました。
・心に感じることがおおくありました。
・時代に強く生きた人の考え方が学べたような気がします。
・教えてもらったことをしっかり守りたい。
・年齢に関係なく人生学ぶこと続けることを学びました。
・大満足でした。今日から健康に気をつけます。
・よく理解できました。感謝しています。
・興味深くわかりやすかった。
・呼吸法、実践したい。
・戦国武将の健康法が面白かった。
・ユーモアをまじえた楽しいお話で参考になりました。
・もう少し時間がほしかったです。
・とても健康のためになる講義をしていただきこれからの生活に取り入れたい
・鈴木先生の聞きやすいお話とこれからの生活態度を考えさせられた講座でした。

講演の内容  

(むつごろう薬局 薬剤師 東邦大学薬学部客員講師 鈴木寛彦)

戦国時代の武将、甲斐の虎と呼ばれた武田信玄。徳川家康公然り、天下に名高い武将の生活は、武力とは裏腹にしっかりとした道徳に基づく生活習慣があります。そこには現代にも通じる健康法が隠されています。ぜひこれを身につけ習慣にして、できるだけ薬に頼らない生活を目指していきましょう。

1、織田信長

2、豊臣秀吉

3、武田信玄

4、上杉謙信

5、毛利元就

6、伊達政宗

1、織田信長(明智光秀)(50歳)(170㎝・65Kg)

激しく厳しい性格で、気が短いが50歳までは超健康体。母の愛情不足が生んだ変わり者の性格は`誉めてもらいたい症候群と負けず嫌いの性分。許せない相手を完膚無きまで叩きのめす、とても怖いタイプ

漢方薬を出すなら・・・・柴胡桂枝乾姜湯

足を鍛える健康法

岐阜城(稲葉山城)90分往復を9年間。 安土城(ビル10階)を上り下り・・太腿筋肉量の要介護危険ライン10g/Kgw、

①  トイレで座り立ち2回、大股歩きや腿上げ

②  足半(あしなか)を使う。

  (50歳を超えると、踵が重心となり、足先が浮く。浮き指が肩こり、腰痛のもと)

③  足先タオル引き寄せ運動2分、1日2回行う。

心を鍛える健康法

切れやすい信長から反面教師 攻撃的でせっかちなタイプAから穏やかな落ち着いたタイプBへ

④  10秒数える方法(理性が介入する6秒を待つ)

2、豊臣秀吉(竹中半兵衛・黒田官兵衛)(62歳)(140㎝・45Kg)

頭の回転がよく、よく気が付く`人たらし`。その性格が出世欲に結びつき奇跡のサクセスストーリーを生む。晩年は育ちの悪さがあだとなり、怒りで孤独を深めた。

漢方薬を出すなら・・・・晩年は釣藤散

  •  どじょう食健康法・・トリプトファン豊富な食事。(幸せホルモンセロトニンを増やす)

  トリプトファンの一日の目標摂取量は体重1Kgあたり2mg。60Kgの人は120mg。

  食品中のトリプトファン含有量(可食部100gあたり)

  白米82mg、玄米94、パスタ140、そば170、鮭250、カツオ310、まぐろ270、豚ロース 

  280、鶏むね肉270、木綿豆腐98、豆乳53mg

②  日光浴健康法・・セロトニン神経にスイッチ(太陽の光が脳幹の膖線核まで届く)

③   踏み台昇降20分・・・一定のリズムで筋肉の弛緩と緊張を繰り返す運動はセロトニン神経を

             活性化する。

④ 無駄に怒らないコツ・・乱暴な言葉を使わない

⑤ 能のすり足・・・大腰筋(足をあげたり、姿勢を保つ筋肉)強化。

          高さ10センチの台に片足を浮かせ前後に10回。

秀吉は、怒りの感情を押さえ切れないことが原因で胃癌の道を辿る。

3、武田信玄(山本勘助)(53歳)

父親との確執が生んだ仲間意識と勝つことへの執着心。信長をも震え上がらせた戦国最強の猛将。晩年は、気遣いと心配性がたたり、胃癌に。生涯勝率75%、敗戦率3.8%でほぼ負けなし。

漢方薬を出すなら・・・・晩年の胃癌に旋覆花代赭石湯

  •  温泉健康法・・・傷口修復のアミノ酸をふくむ信玄隠し湯(アミノ酸は血液によって       運ばれコラーゲンとして欠損部分を埋める、温熱効果で血行をよくする、水圧がリンパの流れをよくし疲労回復効果)短い時でも負傷               して2ヶ月で出陣。

②   トイレでリラックス・・躑躅ヶ崎館内での、6畳の水洗完備の伽羅の香り広がるトイレで一

             人の時間で大事な決断

信玄は、気を遣い過ぎたストレスで胃癌の道を辿る。

信玄の健康法・・・武田家百目録から

1、朝の目覚めは「臍下丹田」から・・・朝寝坊しても急に起き上がってはいけない。これは非常に悪いことである。寝床に仰向けに寝返り、両足をそろえ、両手の指を絡めてゆっくりと、胸から臍の下まで三回なでおろし、それが終わってから、臍から9センチ下の丹田をしっかり押さえてから起き上がるようにせよ。そうすれば、その日のどのような事態に遭遇しても、慌てふためくことはない。このことは大切であるから毎日の癖にとするように。(武田信玄より)

昔の日本人はこの「丹田」を意識して生活してきました。丹田に気持ちを集中すると自律神経が安定します。武道をはじめ茶道、花道と道のつくものは全て丹田の大切さを教えています。

2、安眠は健康のもと・・・いかに疲れているからといっても、すぐに寝床に入って寝てはいけない。毎朝しているように、上記(1)の事を行い晴れ晴れした気持ちで丹田を押さえ気持ちを落ち着けて寝るようにせよ。このようにして就寝すると、夜中にどんな異変に合ってもあわて浮ため機、迷うような事はない。

3、毎時堪忍の二字を意にかけよ・・・床を離れたならば寝床の上にあぐらを組み、その日に行う用事を心の中に描き、よく整理、順序を立ててのち、寝床を出るようにせよ。その後起きて来た家族が自分に気に入らぬような言動などを耳にしたり、見ることがあっても、急に大声を出して怒ったり騒ぎ立ててはいけない。せっかく夜中にゆっくり休んで疲れもとれ、晴々した気分になったのに、朝から陽気をくじくと、その日は何事もうまくいかず、病気などをしたり、取り返しがつかないようなことが起きたりして損失を受けることが多い。したがって朝の朝食が終わるまで心を冷静に保ち我慢柿、食後になってから諸注意を与え、よく話し合ってその理由などを明らかに申し聞かすべきである。何事も堪え性がなく気まま勝手を言うには世渡りの下手な者である。

4、人の心変わりの恐ろしさ

5、負けるが勝ち

(参考文献:武田家百目録(人生訓) 小島勇編訳 武田神社発行)

4、上杉謙信(直江兼続)(48歳)(158㎝・65Kg )

自らを戦いの神・毘沙門天の生まれ変わりと信じ、義経に武略を学んだと言い、瞑想を行い、酒豪となると、その性格は非常に繊細かつ思い込みが激しいタイプの武将。義を重んじる精神が神を見方につけ、織田軍をも手取川の戦いで完膚無きまで叩きのめし、生涯勝率61%、敗戦率2.8%で信玄を上回る。

漢方薬を出すなら・・・お酒と一緒に八味地黄丸

  • 瞑想・・毘沙門堂(思考を司る前頭前野と記憶を司る海馬。物事を決めるとき前頭前野が海馬に指令を出して記憶を引き出して判断を下す。瞑想には脳をリラックスさせることで記憶が整理されて判断が必要とされるときに情報を効率的に出せるようになる。)
  • 一汁二菜と質素な生活
  • 酒(死因の原因にもなった酒ののみすぎによる糖尿病、戦場での馬上杯(一合徳利二本半)

呼吸と姿勢の関係

 胃腸や肺が弱い人の姿勢は、腰が曲り猫背になりがちです。胃腸や肺を守るため自然にそのような姿勢になって行くのですが、気をつけないと無意識に呼吸が浅くなって行きます。私たちは生きるためのエネルギーの85%を空気中から頂いているので、食物の摂り方が良くても、浅い呼吸で酸素不足になると、完全燃焼せずエネルギー化ができず栄養不足になり、疲れやすく、老いやすくなります。平均で呼吸は1分間に16回で、強く長く深くすると1回まで落とせます。上級者は5−10分に1回の呼吸まで平気になるそうです。深い呼吸は酸素効率を高め、新陳代謝を旺盛にし、気魄に富むようになり、疲れにくくなり、若返り、心身の病や治療、予防にもなります。

 深い呼吸をするには、先ずは姿勢をよくする事が大切なのです。では皆さん、その姿勢の作り方、呼吸のやり方を説明させて頂きます。

小倉流姿勢と呼吸の実践

1、お尻を後ろへ引き、臍の下(腰仙関節)を最大限に強く前に突き出す。(腰仙部の筋肉が緊張し、肛門がしまり、臍下丹田に力がみなぎる。)

2、あごを引いて、うなじを伸ばし、肩の力を抜いて落すと、胸が張り横隔膜が下がる。

3、この正しい姿勢で、鼻から音がしないように静かに息を吐き出す。この際徐々に下腹を凹ませ、肛門を締め上げる。

4、次に静かに音のしないように、鼻から息を吸い込み、一旦息を止めてからまた初めのように息を吐き出す。(できれば60秒を目標に吐き出す。腹圧を急に抜くと、反動的に意識せず

大量の空気が肺中に流出して酸素の受容量が増大して、健康増進、脳細胞の活動をよくする。)

深い呼吸は新陳代謝を高める

 この姿勢での呼吸は、全肺呼吸、腹式呼吸と言われ、浅い呼吸と比べ三分の一の呼吸エネルギーで三倍のガス交換ができ、炭酸ガスの排除され、血液のアルカリ性の度合が強まります。血液がよりアルカリに傾くと、ウィルスなどの病原体を排除する白血球の働きが強まり、また疲労物質も溜まり難くなります。手前味噌ですが、確かに気がつくと疲れが違ってきました。朝の寝起きも良いのです。疲れないから、仕事の日でも朝からジョギングに行くこともありました。また驚くことに呼吸が深くなると、食べるスピードが遅くなりました。よく味わって食べるようになったので濃い味を好まなくなりました。以前は体重を減らすため、カロリーを抑えることに躍起となり、その結果、新陳代謝が落ちていることに気がつかなかったのです。深い呼吸はエネルギー効率を上げるため、食べ物が完全燃焼するようになり、少ない量で新陳代謝を良くできるのです。小倉先生の食事は一日一食であったと聞いています。私たちには難しことですが、呼吸を深くし栄養が完全燃焼できれば確かに可能なのかも知れません。

呼吸と漢方薬は、寿司と醤油

 とても大切な組み合わせという意味です。皆さん漢方薬が体に働くメカニズムを知っていますか?一言で言いますと`体内の毒を外に出して病気を治す`という事です。大便、小便、汗、生理などで体毒を出す、手助けをするのが漢方薬なのです。風邪を引いても早く治る方は熱を出せる人で、熱を出す力がない方は風邪が長引きます。深い呼吸をする方は、いつも新陳代謝が高まっているので毒素を外に出しやすく、漢方薬の効きをよくしてくれます。寿司には醤油がなくてはならないように、漢方薬と呼吸は大切な関係です。漢方薬の効きを高めるためにも是非呼吸法を身につけて下さい。

5、毛利元就(75歳)

家康公と同じ寿命で、70歳で子を成し(家康公66歳)、頭を使う生き方は家康公と瓜二つ。

5歳で実母を亡くし、10歳で父を亡くした生い立ちは、命を助けてくれた漢方医、曲直瀬道三の生い立ちに近い。二人を引き合わせた理由がそこにあるかも知れない。よく頭を使いぐっすり眠ることは健康の秘結と元就と家康公が教えてくれている。

漢方薬をあえて出すなら・・・続命湯

  • よく頭を使う・・・三矢の訓、女性に敬意を払う、

② 早起き・・寝つきの良さを良くする。寝入り端90分が勝負。この時成長ホルモンの8割が分泌される。これが睡眠の質を高めてくれる。                    

(イ)脳を使うことで睡眠物質アデノシンをためる。                

(ロ)寝る前のリラックス、小言、愚痴、説教でストレス解消            

(ハ)入浴後深部体温下がる2時間後に床に就く。

③ リラックス体操

  •  お灸・・70歳で意識を失い倒れる。曲直瀬道三のお灸で助けられる。お灸で皮膚を刺激すると  

ヒストトキシンという有害物質が発生。これを除こうと白血球などの免疫成分がふえて回復能力が増す。ツボは、百会、大椎、肩井けんせい、曲池、間使かんし、足三里の7つ。奇跡の回復劇。

⑤ 酒は小さな器で1−2杯

6、伊達政宗(片岡景綱)(70歳)(160㎝・57Kg)

5歳の疱瘡で片目を失い、23歳で落馬による骨折と、健康面で気を使うことを余儀なくされた政宗は、密かに家康公との長生き競争をスタートさせた。その甲斐あって生涯大きな病気なく健康であった。

漢方薬を出すなら・・・利膈湯(食道癌)

①  いい水を飲む。(本丸水源)

②  茶杓つくり。(名人芸でストレス緩和、達成感のやる気ホルモンドーパミンの力で前向きな気

         持ちに。)

③  脈診健康診断・・病気があると、気血水の通り道「経絡」が乱れ脈が乱れる。

政宗は、食道、胃癌、癌性腹膜炎の道を辿る。

終わりに

それぞれの上りつめる故の強い性格は、それによって身を滅ぼす要因にもなります。東洋医学では中庸という考えがあり、`いい加減`が必要だと言っています。頑張り過ぎず、考え過ぎず、人の目を気にし過ぎず、程々を目指していきましょう。それが健康で長い人生を送る秘結になるかも知れません。