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蒼朮(そうじゅつ)の花の開花が終わり、薬草畑では冬支度が始まります。蒼朮の茎はとても固く、そのままの形で春まで立ち続けます。


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店先の「ヒバの木」です。この木から蝋燭ができます。冬に向けて油の補給に実を鳥が奪い合います。もうすぐ、静岡も寒くなります。


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2016年1月の漢方勉強会 無門塾の発表

2016年01月20日

平成27年度・無門塾(第20回1月)北里大学薬学部(港区白金)

【平成28年1月10日、13時30分〜14時00分】

 

 畑の中の三陰三陽(太陰病)

 はじめに

 神無月、彼岸から遅れること二十日。畑は、秋の匂いが一面を覆う。雑草の勢いも衰えはじめ、静けさが戻ってくる。畑の風景(植物の動き)は、「傷寒論」でいう、「太陰病」になっていく。当帰の葉も少しずつ黄色になり、収穫の時期が近づく。牡丹の地上部は既に枯れ、幹には五六個の越冬芽が赤い蕾をつけている。病の勢いも峠を越して、今まで優位であった体力は病毒に負けて、受身の立場に追い込まれる。抵抗力が衰えて産熱が不十分のため、季節が夏から秋に移り変わるように体もまた寒冷が主体となる。

 太陰病の提綱

 太陰病の病たる、腹満して吐し、食下らず、自利益々甚だしく、時に腹自づから痛む。もし之を下せば、必ず胸下結鞕す。

 「太陰病は、初発の陰証にして、即ち裏を位と為して種々なる消極性証候を表わし、も一方に於ては精力も亦未だ甚だしく衰えざるを以て、尚半ばは陽証なるかの如き外観を有す。その主徴は腹満、腹痛、或は不食、嘔吐、下痢等にして、脈は通常沈遅、或は沈弱を呈し、而して之に或は手足の温感或は冷腰脚痛等其の他の種々なる症候を随伴す。」

 「脈浮なれば桂枝湯を以て発汗し、臟に寒有れば四逆輩を以て之を温め、腹満し、時に痛めば桂枝加芍薬湯を以てし、其の実痛の者は桂枝加大黄湯を処する」

 「陰証には合病、併病の称呼無し。是、三陰の各々其の緩急を異にすると雖も、其の位は皆裏の一途にして、彼の三陽証の如くに、表、表裏間、及び裏の区別無きを以て也。」

(傷寒論講義:奥田謙蔵著)

  陰証の初発(太)である太陰病は、彼岸を過ぎても夏日に戻る日がある様に実痛がある。このとき使われるのが桂枝加芍薬大黄湯、附子瀉心湯、大黄附子湯である。痔の痛みには桂枝加芍薬大黄湯を以て是を治し、陰証期の便秘、憩室の痛みには、附子瀉心湯、大黄附子湯がよく応用される。

 霜月(少陰病)の手前では、寒さが体を覆いつくしていく。臓に寒有れば、甘草・乾姜で胸膈部を温めていく。この甘草乾姜湯は、冷えからくる不妊症に駆瘀血剤と兼用していくと結果が出やすくなる。また、胃腸が弱い方の冷えに使う、朮と人参を入れた人参湯はアレルギー性鼻炎、子宮出血、喘息、心臓神経症にまで応用される。また、寒さが一段と厳しくなる少陰病期には附子を入れ四逆湯にして温め、畑が凍りつく厥陰病期では、余分な水気を除く茯苓を入れた茯苓四逆湯や、乾姜を倍量した通脈四逆湯をもって心臓の収縮を助け、冷えを除いていく。

 腹満し、時に痛めば、芍薬・甘草で筋中の血行を良くし切迫症状を緩和し、両腹直筋の異常緊張を緩めて急痛、腹痛、疼痛を治す。我々の体は、自然治癒力を発動させるために、筋肉を収縮させ病邪を追い出そうとするが、その結果、瘀血や痛みを生じさせる。芍薬・甘草はその引きつりを弛緩させることにより苦痛を除くだけでなく、血流をよくして修復を速める。その為芍薬は収縮をとめてはいけない病位(陽明病)や、治癒するために心臓の収縮を強めなければならない心悸亢進(脈促)には使用しない。

小建中湯から苓桂朮甘湯への症例

 不妊症歴3年の30歳女性は、抗精子抗体があり、中肉、下痢気味、唇口乾燥、肩、首の凝り、腹痛があり当帰建中湯3ヶ月で自然妊娠。妊娠14週目で動悸が始まり、「心中悸して煩する」の小建中湯で改善された。出産後3年、第2子妊娠11週目から再び動悸が始まった。小建中湯で効果なく、発作性心室性頻脈と診断された。動悸の頻度は増え脈拍130位まで上がる。苓桂朮甘湯に変更し15日、週3回の動悸が月2回に減り状態は安定。この方は元来とても繊細の方で始めての妊娠の際は神経が興奮し、芍薬の裏(腸管)の異常な働きを(筋肉の収縮)を緩めることにより動悸が改善されたが、出産後の疲れやストレスにより、徐々に心室性頻脈に移行していった為、今度は心臓の収縮を強めなければならない状況になり、芍薬を除いた苓桂朮甘湯が効を奏したと考察する。

 

太陰病期の主症状

 腹虚満、自下利、腹痛、嘔吐、脈は沈遅、沈弱

金匱要略中の婦人病薬(当帰芍薬散、温経湯、芎帰膠艾湯)が太陰病に入る理由

 金匱要略中の婦人病薬で代表的な薬方は、当帰芍薬散、温経湯、芎帰膠艾湯である。これらの薬方は芎帰膠艾湯類と言われ、傷寒論で言う太陰病に含まれると勉強してきているが、その理由を正確に述べている文献が見当たらない。太陰病の提綱は、腹満(虚満)、腹痛である。また、臓に寒有ることもこの病位の条件である。金匱要略では、当帰芍薬散は、「腹中こう痛、腹中諸疾痛」と言い、温経湯は、「少腹裏痛、腹満」と言い、芎帰膠艾湯は、「腹中痛む」と言っている。また、医聖方格では、温経湯は、「婦人、帯下と称する者は、赤白を泄し、少腹裏急し、或は腹虚満し、手掌煩熱し、唇口乾燥し、その人心下痞し、嘔逆し、或は欬唾に血を帯る者なり。」とあり、類聚方広義では、芎帰膠艾湯は、「血痢止まずして、腹満、熱実の症無く、唯だ腹中攣痛し、唇舌乾燥する者は、此の方間ま効有り」とある。また、奥田謙蔵著「漢方古方要方解説」によると、当帰芍薬散の応用として、四肢厥冷、手足に冷感ある証と言い、温経湯の応用として、腰脚に冷感、下肢寒冷の証候と言い、芎帰膠艾湯の応用として、四肢に冷感ある証と言っている。また、この三つの共通する二味の薬徴は、「当帰・川芎」、「当帰・芍薬」である。傷寒論中、当帰は唯一当帰四逆加呉茱萸生姜湯に出てくる。働きは、温めることであり、「手足厥寒脈細にして絶せんと欲する者、内に久寒あるもの」を治すのである。「当帰・川芎」は、「血を和し寒を散じ血鬱を瀉降し、陰性瘀血を和す主役となし、冷え、生理異常、下血、帯下等を治す」また、「当帰・芍薬」は、「血を和し寒を散じ筋中の血流をよくして腹痛を治す」であるから、太陰病期の瘀血を和し、腹痛、冷えを治していく。

 当帰の効能

 古方薬品考:味甘辛、気大温にして芳発す、故に経脈を温達し、気血を調和する能有り、古人は芎窮と同じく用いて、婦人産後の気不足、腹痛及び癰疽を療し、膿を排し、痛を止む                    (内藤尚(ひさ)賢(たか))

古方薬議 :味甘温、咳逆上気(のぼせて咳が出る)、婦人漏下(子宮出血)、心腹の諸痛を主り、腸胃、筋骨、皮膚を潤し、中を温め、痛みを止む (浅田宗伯)

薬性提要 :味甘温、血を補い、燥を潤し、内寒(内臓の冷え)を散じ、諸瘡瘍(皮膚の浅いところに発してもりあがり、痒みがあり、破れたあと糜爛(びらん)する皮膚病の総称)を主る                    (多紀元簡(たきもとやす))

漢方フロンティア :血を和し、寒を散じ、陰証の血証を治す     (田畑隆一郎)

薬徴提要     :腹中を温め腹中の痛みをとる。滋潤。強心作用。(※排膿。)

当帰は、新陳代謝機能を振起復興される剤で傷寒論中では当帰の能は附子剤に近いが、少しく水邪の停滞が有る程度である。また、当帰の温める能は細辛と組む事により附子に近くなり、また水を追う能は木通と組む事により附子に近くなる。このことは、当帰の働く病位が、少陰、厥陰病期の附子剤まではいかない太陰病期にある理由である。(鈴木寛彦)

まとめ

病位    :太陰病

提綱    :太陰病の病たる、腹満して吐し、食下らず、自利益々甚だしく、時に腹自づから痛む。もし之を下せば、必ず胸下結鞕す。(提綱とは、事の主要な点をあげること)

主発現部位 :裏=消化管(腹中)

病勢    :消極性=沈滞下行、陽証から陰証への移行期

主症状   :腹虚満、自下利、腹痛、嘔吐、脈は沈遅、沈弱

治病原則  :温散

 

 (参考文献)

漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社           

漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社

傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 

静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦