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漢方専門雑誌への投稿 「薬徴提要」

2014年08月01日

「薬徴提要」 当帰

はじめに

無農薬、有機肥料の当帰作りを本格的に始めて今年で11年目になる。過去10年間の当帰のエキス含量は、平成16年43.6%、17年40%、18年36%、19年52.2%、20年46.5%。21年35.6%、22年41%、23年46%、24年苗が不作により収穫なし、25年検査中(局法規格値35.0%以上)。当帰が含まれる薬方は金匱要略が殆どであるが、傷寒論では唯一当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯生姜湯がある。婦人薬の代表生薬とされる当帰が、傷寒論中ではどのような役割を持っているのか、私の長年の疑問であった。「陰証の血証を治す」当帰の作用メカニズムを栽培、加工や鑑別なども含めて、多角的に考えてみたいと思う。

栽培加工方法

栽培は15センチほどの大深当帰の苗を南に80度傾けて、畝幅、株間ともに60センチに植えることからはじまる。その後はひたすら雑草抜きに追われる。苗作りしかり、日陰の場所でもよく成長する。当帰が陰性の性質を持つ意味を、その成長過程でも感じることが出来る。秋によく肥えた当帰の根を掘り起こし土のついたまま約1ヵ月陰干にする。葉と根の間を切断し、42℃のお湯にて湯もみをして形を整える。再び天日にて乾燥して乾燥機にて仕上げ、クラッシャーで粉砕する。ところで乾燥途中の当帰はまるでスポンジの様である。その理由に乾燥後の比重は36%にまで減ってしまう。生命にとっての一番の危機は乾燥であり、移動が出来ない植物にとってはなおさらである。黄耆はその体と同じぐらい深く垂直に根を伸ばし、水脈を探す。逆に背丈の10分の1ほどの短い根しかない柴胡は、体内に油を溜めて乾燥から身を守る。当帰根は中にあるスポンジに水をたっぷり溜めている。黄耆はまるで地下水を地上に吸い上げるポンプのように、肌表と内の水のバランスをとり、ジクジク、カサカサの皮膚病を治す。柴胡はその油で胸郭内に溜まった油汚れを取り除き、胸脇苦満を治す。当帰のよく肥えた根茎は、脂肪が守っている女性のお腹のような作りで、生命を宿す子宮が冷えないように腹中を温め体温を保持する。以前の話であるが、寒い雨の日に土の中に手を入れたときに、握った当帰から伝わる温かい感覚を感じたことを今でも忘れられない。当帰が体を温める理由を、理屈ではなく体感できた日であった。

当帰の鑑別法

冬に根を掘り、蟲のつかぬやう又永く貯へられるやう、半ば乾かしてから熱湯の中にほり込み、暫くの後取り出して日光にあてて乾かしたものであります。之を選むのには肥えた大きい鬚根の澤山ついてある馬の尾のやうな恰好で、外皮が褐紫色内部が黄白色で味は始め少し甘く後に少し辛くて能き香と潤のあるものがよろしい。所謂馬尾当帰と申すものがこれであります。坊間には大深当帰と天上当帰の二種あります。大深当帰とは紀州の大深、大和の上市地方より産出する上等の当帰で、鬚根が眞直で澤山著いてあるが、天上当帰は大和の國中邊で産出する品で、多くは鬚根が不正に彎曲してあるのみか、附著せる鬚根も極めて疎らで質も硬い下品の品であります。(一色 直太郎著)

当帰の最高級品は大深当帰と言い、馬の尾のような根っこをしている。味は、甘くて、後に辛い。私たちが作る当帰も沢山の鬚根をつける。以前水はけの悪い土地に植えた当帰を収穫したときに殆ど鬚根が無かったことから考えると、よい当帰が出来る環境は土地がふかふかして水はけのよい土地が望ましい。無農薬有機肥料は植物にとっても最高の環境である。しかし、静岡の気候は暖かいためか、味は甘味が強くなる。薬性から考えると甘味は体を冷やし辛味は温める。甘味の多い当帰では腹中を温める効果が弱まるのかもしれない。付け加えさせていただくなら、湯もみをして整え乾燥させた姿は、まさに女性の横座りに似ている。象形薬理論的に言えば婦人病に効く理由であろうか。

当帰は、セリ科の多年草の根。私たちが無農薬、有機栽培を試みている不妊症の主力生薬。子供ができない婦人が、実家に帰り煎じた当帰を飲んで温まり、再び夫の所に帰ると子供ができたことから、「当に夫に帰る」という意味より付けられたと言う。また、大学機関の実験で、脳の一部を破壊し刺激ホルモンを抑制したマウスに当帰の煎じ液を服用させたら、排卵が起きたという報告を聞いたことがある。当帰に卵胞刺激ホルモンのFSH様作用があることも考えられる。また、媚薬、解毒、強心剤としての強い効果が天使(angelus)の力に例えられAngelicaと言う。これは、新陳代謝機能を振起復興される剤で、傷寒論中では当帰の能は附子剤に近いが、少しく水邪の停滞が有る程度である。また、当帰の温める能は細辛と組む事により附子に近くなり、また水を追う能は木通と組む事により附子に近くなる。

古方薬品考:味甘辛、気大温にして芳発す、故に経脈を温達し、気血を調和する能有り、古人は芎窮と同じく用いて、婦人産後の気不足、腹痛及び癰疽を療し、膿を排し、痛を止む(内藤尚(ひさ)賢(たか))
古方薬議 :味甘温、咳逆上気(のぼせて咳が出る)、婦人漏下(子宮出血)、心腹の諸痛を主り、腸胃、筋骨、皮膚を潤し、中を温め、痛みを止む (浅田宗伯)
漢方フロンティア :血を和し、寒を散じ、陰証の血証を治す
薬徴提要     :味甘辛温。血を温めて、滋潤し、腹を温め、子宮筋等の痙攣を弛め、心を補い、陰気を通じる。

二味の薬徴 

当帰・川芎 :血を和し寒を散じ、血気の滞りを行らし、陰証の瘀血を和す主薬となし、冷え、生理異常、下血、帯下等を治す(川芎は血を循らせる力が強い)
(当帰芍薬散、芎帰膠艾湯、当帰散、温経湯、奔豚湯、続命湯)

当帰・芍薬 :血を和し寒を散じ、筋中の血流をよくして温めて腹痛を治す(芍薬は血を清して収斂する)
(当帰芍薬散、芎帰膠艾湯、当帰散、温経湯、当帰建中湯)

当帰・大棗 :血を和し寒を散じ、胃を滋潤して血のめぐりをのびやかにして、身体の殻冷えを温散する
(当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯)

当帰・黄耆 :益気生血の効能を現わす
(帰耆建中湯、十全大補湯、補中益気湯)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯

その条文を厥陰病に置いて弁別している当帰四逆(加呉茱萸生姜)湯の冷えは、手足厥寒といって手足が他覚的に微冷し、患者もまた自らその寒冷を覚える。脈細は、外気の寒さから身を守るために血管を縮めたための`細`であり、桂枝湯中の大棗を倍量させることにより表に縮む血分を滋潤して順通下降させ、当帰と木通の組み合わせにより裏に縮む水気を回らせ小便に通理させ、当帰と細辛の組み合わせにより手足の厥寒を治す。一方、厥陰病の通脈四逆湯は、厥逆といって他覚的に寒冷しているが、感覚が麻痺していて自らはその冷えを感じないし悪寒することもない。反って毛細血管が開きっぱなしとなり顔色は赤くなる。当に危篤の証である。この場合、脈は微にして今にも絶えそうになる。病位が腹腔内から胸膈内に移り、心臓停止する寸前に登場する起死回生の生薬が、甘草・乾姜・附子である。附子の新陳代謝機能を振起復興させる働きは、甘草と大量の乾姜を伴ってより強くなる。よって、傷寒論中の当帰の役割は、心臓衰弱し、体のいたるところに浮腫が出てきて、冷え切っている状態に使う附子とは違って、温め水気を揺さぶる程度であるが、細辛と組むことにより温める能は附子に近づき、水を追う能は木通と組ことにより附子に近づく。通脈四逆湯は、危篤の症でなくても、甘草・乾姜の二味の薬徴が働く肺中冷を目標に気管支喘息や肺炎に使われ、難治な関節リウマチや、疼痛にも使われる。一方当帰四逆(加呉茱萸生姜)湯は、外部からの冷えが症状を憎悪させるものが中心で、凍傷やチアノーゼ、頭痛、腰脚攣痛、冷え腹による下痢に応用され、附子が出るまでも無い。傷寒論から考えると、この方に加附子することは薬方のバランスを欠いてしまい、効きを鈍らせてしまうのではないかと考える。諸先生方の考えを問いたい。

不妊症治療でよく使われる当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、証が合うと服用まもなく体が温まるといった自覚症状の方が多い。この場合の妊娠に至るまでの期間は多くが1-2ヶ月で実に速い。運動不足で南国の果物や甘物が好物な方にも本方はよく効を奏する。温め水気を揺さぶる程度で変化が出てくる、動きやすい状態である。これに対し赤丸や通脈四逆湯等の附子剤を兼用しなければ動かない方の冷えは、妊娠までの期間として1-2年は要する場合もある。

症例1)不妊症歴3年の31歳の女性は、左卵巣に2cmのチョコレート嚢腫があり、中肉 イライラ、不安感、足が冷え、疲れやすい、肩の凝り、生理痛、腹冷、甘いものが大好き(チョコ、アイス、菓子パン、南国の果物)家族歴は糖尿病がある。お腹が冷えると胃痛腹痛を起こす。当帰四逆加呉茱萸生姜湯を与え、1ヶ月で頭痛、胃痛がよくなり基礎体温が上昇。2ヶ月服用で生理痛解消、排卵期おりものが増え、高温期が10日から14日にのび、服用3ヶ月で自然妊娠。2年後、めまい、疲れやすい、目の疲れ、途中覚醒5-6回、冷え、便秘で再び当帰四逆加呉茱萸生姜湯1ヶ月服用で体が温まり、翌月第二子自然妊娠。

症例2)6年前からの生理痛。腰痛腹痛で手足の冷えが辛い。左卵巣に3cmのチョコレート嚢腫がある。舌は白苔、歯根あり、やせ方、神経質、便秘、頭痛、貧血。過去に2回の肺炎がある。当帰四逆加呉茱萸生姜湯を与え1ヵ月で体が温まり、腰痛が消え、腹痛が軽くなり、排卵日の帯下が増えた。その後2ヶ月で自然妊娠。

まとめ

寒冷地で育つ食べ物はよく人の体を温めるというが、日陰で育つ当帰はよく体を温める。

傷寒論中の当帰の役割は、温め水気を揺さぶる程度であるが、細辛と組むことにより温める能は附子に近づき、水を追う能は木通と組ことにより附子に近づく。当帰が主薬の当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、証が合うと服用まもなく体が温まるといった自覚症状の方が多く、不妊症に置いては比較的短期に妊娠する例が多い。

参考文献)
漢法ナビゲーション      田畑隆一郎著         源草社  
漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社       
漢方ルネサンス        田畑隆一郎著         源草社
傷寒論の謎          田畑隆一郎著         緑書房       
薬徴             田畑隆一郎著         源草社
よくわかる金匱要略      田畑隆一郎著         源草社       
漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社
漢方 第三の医学       田畑隆一郎著         源草社     
和漢薬の良否鑑別法及調製方  一色直太郎著         谷口書店
傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 
症例実解漢方薬学       小池一男・庄子昇・塚田健一  京都廣川書店
古方の薬味          根本義雄著
漢方腹証講座         藤平健著           緑書
薬徴提要           鈴木寛彦の見解

静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦