西洋医学で治りにくい病気こそ“漢方”の出番です…皮膚病、不妊症、癌、膠原病など

むつごろう薬局「自然の漢方薬で赤ちゃんはきっとできる」

今月のおめでた
今月のおめでた

おめでた情報はこちら

むつごろう畑の近況報告

寒さが厳しい中、当帰の赤ちゃんが顔を出しました。寒い冬を乗り越え大きくなってください。


むつごろう新聞

トピックス情報

定期的にノルウェーのお客様から写真が届きます。お名前はヤスさん。ブログも書いていますからぜひ皆様ご覧ください。

ヤスさんは、盲導犬の教育をしている日本人です。いつも心がこもった、優しい写真が多く、私の気持ちを緩めてくれます。

ヤスさん、いつもありがとうございます。

むつごろう薬局は、国内だけでなく、世界10か国以上の方とスカイプによる漢方相談をしています。是非ご興味がある方は、相談希望のメールをお送りください。

http://info@mutsugoro.co.jp  担当者 薬剤師 鈴木まで

 


ノルウェーからのお便り
紫雲膏
むつごろう八選茶

漢方専門誌への原稿投稿

2016年08月01日

 

内容

畑の中の三陰三陽

(太陽病)

 

はじめに

 

畑の一年と、傷寒論中の病の進行(三陰三陽)は実によく似ている。そこで体感する風や雨や土の感触は、東洋医学特有の液体病理概念「気・血・水」の理解に役立つ。また、雑草やそれを迎え撃つ薬草が畑の中で生き延びるための方法がヒントとなって、傷寒論中の生薬の働き(生体防御反応)を理解した。頭の悪い私にとって畑仕事は難解の傷寒論を解くヒントになっている。自己流の勝手な解説をお許しいただければ幸いである。

 

 

太陽病

 

弥生。彼岸を過ぎてから、柴胡の種まきが始まる。幅60㎝の畝の上を、板を使って平らにし、棒で筋を引き、種を握り少しずつ蒔いていく。なかなか芽が出てこない柴胡を横目に、真っ赤な芍薬の芽が、まるで地面から血を吹き出す如く伸びてくる。昨年枯れた幹の根元に鮮やかな緑色の葉をつける当帰。少し遅れて、棘の葉を持つオケラ(蒼朮)も同じく芽生える。卯月。牡丹の発芽は独特で、幹の途中から芍薬に似た真っ赤な、まるで卵管采(生殖器の一部)のような葉を広げ始める。漸く葉の根元が赤紫の柴胡が2本の可愛らしい芽を出す。気温が上昇してくる3月から4月、畑はにぎやかになってくる。傷寒論で言う太陽病(たいようびょう)の時期となる。気温が上がり、霜が溶け、太陽の熱によって土が温まる時期、停止していたものが動きだす時期、雑草も異常に増強する。一般的に病気の初期では体力が病毒よりも優位な立場にあり、その症状は活動的で熱性を帯び、病的反応は異常に増強する(発動上行温暖)。この時期を発揚、温暖の意味をもたせて陽証とよぶ。また、「太」は、太初の意(はじまり)で、太甚(はなはだしい)の義である。

 

太陽病の提綱

太陽病ノ病タル、脈浮二、頭項強バリ痛ミ、而シテ悪寒ス

 

人間の病毒に対する生体防御反応は非常によく出来ている。最初に迎え撃つ戦場(太陽病)は体表面で、敵の援軍を阻むが如く皮膚を引き締め、病毒を何とか外に押し返そうと脈は張り出し(脈浮)、効率よく産熱するために僧帽筋を収縮させる。より体温を引き上げなければならないため、脳のセットポイントをはずし、その結果悪寒がする。(緊縮凝結)高熱によって病毒が弱ったタイミングで、桂枝・麻黄の二味の薬徴が中心の発汗剤、麻黄湯や葛根湯などを使い一気に病毒を外に追い出す。これが太陽病実証の治病原則である。

また、そのほかに、お腹をたたいて、バシャバシャ音がして喘咳があれば小青竜湯。こじれて顔が赤く、暑がりで咳をしているならば桂麻各半湯。渇があり尿不利で体痛すれば桂枝二越婢一湯が応じる。

同じ太陽病であっても体力は低下し闘病反応が減弱している者は、顔赤く、のぼせて汗ばむ傾向にあり、解肌の剤桂枝湯と‘お粥‘と‘どてら‘で、しっとりとした汗をかかせて治していく。(動揺散漫)。解肌とは、だらだらとした汗を、しっとりとした汗に変えて治病することである。「遍(へん)身(しん)ちゅうちゅうとして微似(びじ)して汗(あせ)有るもの益(ますます)佳なり」【微は、微行。似は嗣(つぐ)。全身からにじむような汗がひそかに継承している者は一層よいのである)】

このような方に間違って麻黄剤を出してしまうと、汗が止まらなくなり脱汗する。脱汗とは流れるような汗が出ることで、汗が止まず尿不利で手足が冷え引きつれば病は少陰病に流れて、桂枝加附子湯の出番となる。また、この証が更に深く進行し寒冷し、攣急疼痛するものは芍薬甘草附子湯であり、また、動悸、めまいするものは真武湯である。更に病が進行し陰の極、厥陰病まで行き着くと精気衰憊し、四肢厥冷し煩躁するのを治す茯苓四逆湯で起死回生をはかる。

脱汗は誤治だけでなく過剰服用でも起こる。私の失敗談であるが、疲労と寝不足がたたって風邪を引き、寒さ、頭痛、咽頭痛、腰痛から麻黄湯を服用、30分後、汗が出ないことから再び麻黄湯を服用した。その後激しい動悸に見舞われ、流れる汗が止まらず手足が冷たくなり小便が出ない。渇もない。茯苓甘草湯を急ぎ作り服用30分後、汗が止まり動悸も無くなりぐっすり眠ることが出来た。

病の始まりは太陽病からであるが、この度の私のように疲労と寝不足により、体力、気力が落ち込んでいて一気に第5ステージの少陰病に流れる場合がある。‘直中の少陰病‘で、その症状も太陽病に似て、汗が無く、背悪寒、発熱(虚熱)、咽痛、喘や項背強ばり、脈が浮の場合もある。これが太陽病の裏の証と言われる所以である。しかし本来少陰病は、脈微細でだるく気力乏しく横になりたい状態であるから患家の状態を詳細に見ていかなければ危険である。「物事には全て表と裏がある。いつも両方見る目を養わなければならない。太陽病期で起こっていることは、少陰病も合わせ見なければならない。」師がいつも口癖のように言っている言葉である。

(少陰病の提綱:少陰ノ病タル、脈微細二シテ、但ダ寐ント欲スルナリ)

 

太陽病期の二味の薬徴 

 

桂枝・麻黄(石膏);汗を峻発させ、また表裏ともに徹する熱を解す。 

桂枝・甘草;表気を発散し、切迫症状を緩和し、気逆上衝を治す

生姜・大棗;胃中の水の動揺を治め血のめぐりをのびやかにして脾胃の機能を高める。

甘草・麻黄;急迫症状を緩和し表位、上部の水気を和し、表位に外迫する裏水を除く。

芍薬・甘草;筋中の血行をよくし切迫症状を緩和し、両腹直筋の異常緊張をゆるめる。

 

病気のメカニズムと生体防御反応を知る

 

傷寒論のキーワードは、(出るもの)と(入るもの)と考える。また、太陽病の治病原則は、虚証は解肌、実証は発汗である。解肌の剤は桂枝湯、発汗の剤は麻黄湯が代

表である。解肌とは、だらだらとした汗をしっとりとした汗に変えることで、力なく漏れ出す水気を調節することである。桂枝湯の主薬は桂枝であり、桂枝・甘草が中心となる二味の薬徴である。桂枝は甘草と組んで、表気を発散し、切迫症状を緩和し、気逆上衝を治す。表気を発散させることにより病邪を除こうとしているが、名将の影に名参謀ありで、そこには芍薬の存在が重要な位置をしめると考えている。桂枝が表を守る「衛」であるならば、芍薬は裏を守る「栄」であり、「桂枝・芍薬」は主に太陰病期の腹痛に用いられる。したがって、表虚の程度が強く、猛烈な頭痛、のぼせなどの上衝の激しいものは桂枝をおよそ倍加した桂枝加桂湯となり、闘病力が減退して脈促、胸満するものは胸中にのみ主薬を働かせるために芍薬を除いた桂枝去芍薬湯を使う。裏に働く芍薬を入れる意味と除く意味を、太陽病の虚証、実証で考えてみた。

 

桂枝湯中の芍薬の意味

芍薬は自動車のブレーキのような働きをする。もう少し詳しく言うと、芍薬は(正確には甘草とペアーを組み)、裏(腸管)の異常亢進を緩めることにより(この場合は副交感神経を抑制する)、相対的に肌表の緩んだ気を正常化し(やや皮膚の交感神経が亢進する)、だらだらした汗をしっとりした汗にする手助けをする。(裏気を表位に達せしめる)

このことは、食後に緊張感が取れて眠くなる反応を考えていただくとわかりやすいが、食物を消化するために腸の働きが活発になると、交感神経が緩みリラックス状態となり肌肉の緊張が緩む。この逆が芍薬(芍薬・甘草)の働きで、内臓の異常亢進を抑制させることにより相対的に皮膚に緊張を持たせる。

 

大青龍湯中の石膏と去芍薬の意味 

(麻黄湯で発汗できない場合、石膏を入れる理由、芍薬を除く理由)

ブレーキを失った自動車は止まることなく走り続ける。麻黄湯でも発汗できない病邪には捨て身技で、芍薬というブレーキをあえてはずし肌表を緩ませ発汗を促す。それだけでは物足りず石膏と言うアクセルを使って更なる発汗を促す。もう少し詳しく言うと、肌肉の緊張が強く、毛穴は開かないため、肌表に水気が渋滞し(熱を冷ますために水が集まる)、その結果、血脈中が乾いている状態(汗出でずして煩躁する)が大青龍湯の証で、石膏は、血脈中の水気を保持させ、裏熱をとる。また、裏(腸管)の働きを刺激し亢進することにより、相対的に肌表の緊張が緩み(やや交感神経が抑制される)、発汗させる手助けをする。芍薬を除く理由は、肌表の緊張を緩ませ、発汗の手助けをする。

 芍薬は裏を守ることが主なる仕事となるため、太陽病期では裏(腸管)を緩めて、肌表の気を引き締めると考える。

 

同じくブレーキを失って制御不能となった薬方がある。太陽病の桂枝去芍薬湯に、少陰病の麻黄附子細辛湯を合方した桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯である。別名桂姜棗草黄辛附湯と呼ばれるこの薬方は、金匱要略では「気分、心下堅、大ナルコト盤ノ如ク、辺旋杯ノ如キハ、水飲ノ作ス所」とある。表裏を循環する気が分かれ分かれになり、心下に取り残された水気が堅く杯のような形となって固まっている状態である。師曰く、使用のコツは「胸苦しくないか」と聞き、腹候では、剣状突起と臍のちょうど中間の中脘と呼ばれるあたりが円盤状に膨隆していて押すと痛みがあるが、膨隆せずに圧痛だけでもよい、と言っている。このことを目標に喘息や、肺癌の方に応用している。

 この薬方を使用する方は、桂枝湯より力なき状態(少陰病を含む)なので、心下に堅く固まった水気を、陽気を増す「細辛・附子」を使って、肌表近くまで持ち上げ、「桂枝・麻黄・附子」を使って発汗させると思いきや、上位表部に僅かな水気が点在しているため、芍薬をはずして肌表の緊張を緩ませ、一気に発汗させると考える。

 傷寒論・金匱要略は、影の参謀「芍薬」の目立たぬ動きがあったからこそ完璧なものになったと改めて感動を覚えている。

 

桂枝去芍薬湯から派生する薬方

太陽病:大青竜湯

少陽病:桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蛎救逆湯、炙甘草湯、

太陰病:厚朴七物湯

少陰病:桂姜棗草黄辛附湯

 

 

脱汗に応ずる二味の薬徴(水気をつかむ)

 

脱汗とは流れるような汗が出ることで、汗が止まず尿不利で手足が冷え引きつれる。また、誤治だけでなく過剰服用でも起こる。桂枝湯の方にも「水の流漓(りゅうり)したる如くならしむべからず。病必ず除かれず。」とあり、桂枝湯でさえ過剰服用に気を配っている。

少し西洋医学的に考えてみると、異常発汗は、水分とナトリウムが流れ出し(等張性脱水)、心臓に至っては、心筋細胞内に、ナトリウムチャネルで流入するナトリウムの量が減り、電位差が生じ難くなり、その結果カルシウムが筋小胞体から放出され難くなり心臓の収縮が悪くなる。血流量が悪くなり、手足が冷え引きつるようになる。

茯苓甘草湯で考えてみると、水気が体表近くに張り出して血脈中に少なくなるために、まず、桂皮で表気を発散させ気を引き締める。茯苓で余剰の水気を下降通利し、血分に滋潤を与え循らし(薬徴提要:茯苓)、甘草で体液を保持させる。また、茯苓甘草湯は水飲が咽喉に動揺して呼吸促迫するため、渇は無く、水気の動揺を治す生姜が大切な役割を果たしている。

更に深く進行し寒冷し、攣急疼痛するものは附子で心臓の収縮を強め、甘草で体液を保持させることが必要になる。

 

脱汗に応ずる二味の薬徴

「茯苓・甘草」:心悸亢進、短気を治す

「甘草・附子」:陽気を復し厥冷を治す

「茯苓・附子」:寒凝した水気をほぐし陽気不順をめぐらす

「芍薬・附子」:筋中の血行をよくし陽気を救い、悪寒を治す」

 

 

(まとめ)

 

病位    :太陽病

提綱    :太陽病ノ病タル、脈浮二、頭項強バリ痛ミ、而シテ悪寒ス

 

主発現部位 :表=皮膚・神経・関節など

病勢    :積極性=発動上行温暖 (虚証は、動揺散漫。 実証は、緊縮凝結)

主症状   :脈浮、頭痛、項背の強ばり、悪寒発熱、関節や筋肉の痛み

治病原則  :虚証は解肌。 実証は無汗。

二味の薬徴 :桂枝・麻黄(石膏)、 桂枝・甘草、 生姜・大棗、 甘草・麻黄

芍薬・甘草

 

 

(参考文献)

きぐすり曼荼羅        田畑隆一郎著         源草社  

漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社           

漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社

傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 

傷寒論講義研究        塚田健一  

 

 

静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦