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蒼朮(そうじゅつ)の花の開花が終わり、薬草畑では冬支度が始まります。蒼朮の茎はとても固く、そのままの形で春まで立ち続けます。


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漢方勉強会「無門塾(北里大学)」の発表 茯苓(ぶくりょう)

2014年07月24日

「薬徴提要」

平成26年度・無門塾(第19回7月)北里大学薬学部(港区白金)【平成26年7月13日、13時30分〜14時】

茯苓

はじめに

移動が出来ない植物にとって一番の危機は乾燥である。黄耆はその体と同じぐらい深く垂直に根を伸ばし、水脈を探す。逆に背丈の10分の1ほどの短い根しかない柴胡は、体内に油を溜めて乾燥から身を守る。当帰根は中にあるスポンジに水をたっぷり溜めている。黄耆はまるで地下水を地上に吸い上げるポンプのように、肌表と内の水のバランスをとり、ジクジク、カサカサの皮膚病を治す。柴胡はその油で胸郭内に溜まった油汚れを取り除き、胸脇苦満を治す。当帰のよく肥えた根茎は、脂肪が守っている女性のお腹のような作りで、生命を宿す子宮が冷えないように腹中を温め体温を保持する。また、ムカデの百足を伸ばしたような蒼朮(*1)は、その長い根っこで四方八方水探しに駆け回る。そして茯苓は・・・。畑では栽培できないこの菌糸体の生薬は、どのような感覚で水気の剤として捉えていったらよいのであろうか。切り倒された松の根っ子の先に、3-4年経つと茯苓が出来上がる。大きさは拳より大きく削ってみると真っ白でなんとも不思議な塊である。まるで霊魂→霊塊→(松(まつ)塊(ほど))→伏霊→茯苓のようなイメージである。「松の神霊の気が伏結してできるもの(漢法ルネサンス)」

茯苓はサルノコシカケ科のマツホド菌は多孔菌科の木材腐朽菌で、松の根を分解して生きていることになるが、松の樹液の成分(テレビン油やロジンなど)の油を吸収するのではなく、茯苓の主成分が炭水化物(パヒマンで93%構成)であることから、樹液で守られた根の水分を3-4年かけて少しずつ吸収しているのではなかろうか。「水気の逆行を下降して・・」とは、地上部の切り株から根の先まで水気を引き下げ吸収しているイメージで捉えたらどうであろうか。

茯苓の鑑別法

皮の黒い内部の白い実質の緻密な硬くて重いものが良質であります。内部の暗色を帯びたものや、脆弱に過ぐるものや、至つて硬いものはいけませぬ。

茯苓の調整方

角製のものは一般に山製と称へ、採り立ての軟かき際に骰子形にきったものであって、調剤にはそのまま使えます。山出しの皮付茯苓は充分乾燥したる後粗皮を剥ぎ、質の緻密のものは平製となし、又は差込にて庖丁を右へはねる心持にて恰かも鰹節かきにて削った鰹節のように、ちりちりと巻いた削り方にいたします。之を削茯苓と呼んでおります。其削りに出来がたい部分は差込で粗雑に切って其を再び両手にて細かく刻みます。(一色 直太郎著)

薬徴

悸(動悸の軽いもの)及び肉瞤筋惕(筋肉の間代性痙攣でピクピク動くこと)を主治する也。旁ら小便不利、頭眩、煩躁を治す。(吉益東洞)

重校薬徴

利水を主る。故に能く停飲、宿水、小便不利、眩悸、瞤動を治し、煩躁、嘔渇、下利、咳、短気を兼治す。(尾台榕堂) 

古方薬議

味甘平、胸脇の逆気、恐悸(恐れたり驚いたりして動悸のするもの)、心下結痛を主り、小便を利し、消渇を止め、胃を開き瀉を止む。能く気を導き水を行らす、故に常に朮と友たり。(浅田宗伯)

漢法フロンティア

水気の逆行を下降して小便を利し心下悸、煩躁、驚悸等を治す。(田畑隆一郎)

薬徴提要

味は淡平、主に胸中より頭にかけての余剰の水気を下降通利し、血分に滋潤を与え循らす。

吉益東洞が、朮附の方位を見出したのはこの国の湿度の高さ故であろうか。人間の70%は水分であるようにこの水が私たちに与える影響は大きい。茯苓が働く部位が、太陽病以外のすべての病位であることからもそのことがよく分かる。四診でも的確に水気の変調を見つけることが出来れば患家は楽になる。滞りは上焦か中焦か下焦か、表か裏か表裏間か。熱寒か。上焦表位であれば麻黄が発汗に働き(麻黄湯)、防已は利水に働く(防已黄耆湯)。胸間の上部裏水を除いて気管の浮腫をとり喘咳を治すのは杏仁であり(茯苓杏仁甘草湯)、中焦の胃内停水は呉茱萸が除く(呉茱萸湯)。内外の水道を通理するのは、朮である。また、沢瀉は陽証で熱証を有するものに使われる(猪苓湯)。逆に陰証で寒証の極では附子が働き(真武湯)、陽証に使う場合は注意が必要である。

私たちは植物とは違って水を求め移動できるので、乾燥に対する恐怖はそれほどでもなく、ましてや傷寒論が出来上がった江南高温多湿地域では水の排出と共に病気を治すことを考え、治療は積極的に行われる為、「反って」や「後」のことも考えた。
傷寒、若しくは吐し、若しくは下して後、心下逆満し、気、胸に上衝し、起てば則ち頭眩す。脈沈緊。(汗を発すれば則ち経を動かし、身振振として揺(うご)かさるる者。)茯苓桂枝白朮甘草湯之を主る。(傷寒論/太陽病中67章)

(悪性の病で、7日間便秘が続き頭痛して熱があるものに承気湯を与えて下した後、裏気激動し水気と共に気逆して中満し、客気胸に上衝し、頭旋眩暈となる。水気動揺により、脈浮緊とならず脈沈緊となる。誤治により発汗すると眩暈の上に体がふらふら揺れるようになる。之真武湯の主治となる。)また、68章では、発汗して病解せず、反って悪寒するものは芍薬甘草附子湯となり、69章では発汗若しくは下した後煩躁するものは茯苓四逆湯となり、70章では発汗後悪寒せず熱するものは、調胃承気湯となる。71章では、発汗後大いに汗が出て、脈浮、小便利せず、微熱し、消渇するものは、五苓散で表裏双解(熱を発散させ、水を利する)させる。(兼病)

苓桂朮甘湯は、血の道症やノイローゼの神経疾患、心悸亢進や弁膜症、心臓神経症などの心臓疾患、胃下垂、胃アトニーなどの消化器系、眼疾患、高血圧、耳鳴り、貧血症不妊症など応用範囲が広い。その主薬は、茯苓であり主に胸中より頭にかけての余剰の水気を除くことにより神経伝達を緩和し、水の動揺による神経障害を治し、血圧を安定させ、リンパの流れをよくし、間接的に女性ホルモンのバランスまでも安定させる。茯苓・朮は水気を順通させ、茯苓・桂枝は動悸を治し、茯苓・甘草は煩躁、心悸亢進を治し、桂枝・甘草で気逆上衝を治す。また、苓桂朮甘湯は加味方も多く、和田東郭の明朗飲(苓桂朮甘湯加車前子、細辛、黄連各2)本間棗軒の連珠飲、原南陽の定悸飲(呉茱萸、牡蠣、李根皮)、吉益東洞の芎黄散との兼用が有名である。

症例1)28歳女性。飛蚊症と不妊症。身長151㎝、体重42.5㎏。中肉中背、心配性、不安感あり、動悸、立ちくらみ、両耳で、耳鳴りがキーンとひどい、肩こりがあり、生理は、レバー状のかたまりが混じる、子宮内膜症があり、アミラーゼと血糖が高めである。

苓桂朮甘湯を服用して10日後、夜間尿が1回となり、ドライアイであった目からは、右のみ涙が出るようになってきた。その7日後、視力が上がり、1ヶ月後に妊娠された。

症例2) 87歳女性。顔の中心部の帯状疱疹。2ヶ月前の風邪から目の違和感があり、現在まぶたの麻痺と左則頭部の頭痛に悩まされている。過去に心房細動あり。バルトレックスを使用しているが効果なし。身長140cm体重50Kg五苓散を服用して2ヶ月、
まぶたの麻痺と頭痛が改善。全体的に8割の痛みが消失

二味の薬徴

茯苓・朮 水気の逆行を下降し水道を利し、水気を順通すること最も速やかな剤となし、発熱、眩暈、尿不利、尿自利、胃内停水、不食、胃反等を治す。

桂枝去桂加茯苓朮湯3・・・裏水が心下に滞り、小便不利して発熱し、汗なく、項背強ばる者の水気を小便に通じる。
苓桂朮甘湯4・・・水気が上迫して心下より頭面に至るまで逆行する。故に起つときは頭眩する。これ水気の変で茯苓・朮相合してその水を除き、桂枝・甘草相助けてその気逆を和す。
五苓散18銖・・・これ胃中の水が外行して内の津液がなくなり、ひどく渇して小便は不利する。茯苓・朮、猪苓、沢瀉で外行の水を下降して胃中に行らすときは病は愈える。
茯苓飲3・・・・・胃中にガスと水が充満する症は茯苓・朮の行くところである。本方は能く食気を促す効がある。
苓姜朮甘湯4・・・これ陽気が不順で水気が滞り、腰中冷えて、小便自利する者で、茯苓・朮は尿利を整えるが、甘草・乾姜の効が大きい。
当帰芍薬散4・・・この証は水血が相結んで腹中丂痛する。茯苓・朮・沢瀉の水と当帰・川芎・芍薬の血が相合する証である。
真武湯3・・・・・陽気が外に脱し水もまた外漏動揺して、下利、小便不利、四肢沈重疼痛、乾嘔の症がある。
附子湯3・・・・これ陽気が収縮し、水血が寒疑して背悪寒し、手足寒えて身体が痛む。茯苓・朮は水気に繋がる。

桂枝・茯苓 

裏気の衝逆を和し水気の逆行を下降し、動悸を鎮め、奔豚、胎動を治す。

五苓散 半両・・・微熱、消渇、水逆
苓桂甘棗湯4・・・気逆によって裏水が上行し、更に下部の水を上提せんとして奔豚をなさんとする。大棗・甘草は血の動迫を下降する。
苓桂朮甘湯3・・・水気上逆して心下より頭面に至るまで逆行する。故に起つときは頭眩する。茯苓・朮合してその水を除く。
苓桂味甘湯4・・・その面酔状の如し。桂枝・五味子は上逆する気を収斂下降する。
茯苓甘草湯2・・・厥して心下悸す。茯苓・生姜は水飲の動躍を治す。
桂枝茯苓丸 等分・漏下止まず、胎動動いて臍上にある者の癥痼を下す。
八味丸1・・・・・水気を通じる。
茯苓・甘草 
心悸亢進、短気を治す。
茯苓甘草湯2・・・ひどく汗が出て、小便不利し、冷えあがって激しく動悸するを治す。茯苓・生姜は心胸に動躍する水気を除く。
茯苓杏仁甘草湯3・胸中寒がり短気する者の呼吸促進、心悸亢進を治す。
酸棗湯2・・・・・血鬱を下降する茯苓・酸棗仁の効を扶けて逆行する水気を静定する。
茯苓四逆湯6・・・心脾機能の不足による心悸亢進、息切れ、煩を治す。

(まとめ)
大便や小便、月経、汗や気持ちまでが順調に体内をめぐっていれば人間はいつまでも健康で病気もせずに快適な生活ができる。この循環が狂ってしまうと病気になると東洋医学は考えて、薬草等を上手に用いて気をめぐらし、余分な水を除き、血液をスムーズに流して自然治癒力を高めて病気を治す。茯苓は松の栄養分を根の先に引き下げるように、胸中より頭にかけての余剰の水気を引き下げ除く。東洞も茯苓の働きを「悸及び肉瞤筋惕を主治する也。」といっていことからも、傷寒論中では心下の痞結を恐れ、その原因の多くは水気の滞りが原因となる。結胸は水毒と熱毒が胸中にあって心下部より下腹部に至るまで硬満して痛むもので、水気が凝り固まってしまうものである。茯苓が働くところはもっと軽いものであるため、うまく証に合わせると比較的短時間で改善される場合が多い。

むつごろう薬局 鈴木寛彦

(参考文献)
漢法ナビゲーション      田畑隆一郎著         源草社  
漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社       
漢方ルネサンス        田畑隆一郎著         源草社
傷寒論の謎          田畑隆一郎著         緑書房       
薬徴             田畑隆一郎著         源草社
よくわかる金匱要略      田畑隆一郎著         源草社       
漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社
漢方 第三の医学       田畑隆一郎著         源草社     
和漢薬の良否鑑別法及調製方  一色直太郎著         谷口書店
傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 
症例実解漢方薬学       小池一男・庄子昇・塚田健一  京都廣川書店
古方の薬味          根本義雄著
漢方腹証講座         藤平健著           緑書
漢方212方の使い方      埴岡博 滝野行亮       じほう
薬徴提要           鈴木寛彦の見解