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むつごろう畑の近況報告

この連休は、畑仕事でした。台風一過、気温は上がりましたが湿度は低く気持ちよい1日でした。当帰は順調に成長しています。


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9月中旬に当帰の花が咲きました。今まで見たことがありません。これも異常気象の影響でしょうか?(9月18日撮影)


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東亜医学協会「漢方の臨床」への投稿

2015年06月24日

         医師・薬剤師リレー治験録131

            薬徴提要「芍薬」         

内容

はじめに

10月、彼岸から遅れること約20日。秋の匂いが畑を覆いはじめる。地面から、吹き出してくる雑草も勢いが衰え、畑に静けさが戻ってくる。畑の風景は、「傷寒論」でいう、「太陰病」になっていく。当帰の葉も少しずつ黄色になり、収穫の時期が近づく。既に地上部が枯れている5年目の芍薬も収穫の時期に入る。芍薬の掘り起こしはこれまた大変で、スコップのみでする作業は実に骨が折れる。直径1.5mの円から出てきた芍薬は、まるでたこの足のような様相で、その一本一本は子供の腕ぐらいの太い根っこ。根茎と根を切り離し、土を落として川砂を入れ、たこ洗い機で洗うこと20分まるで洗剤を入れたような泡立ちでその中から出てきた芍薬は薄皮を剥がされ、まるで別人のような色白美人となる。芍薬の主成分ペオニフロリンの香りは、生は刺激が強く作業中少し辛くなるときがあるが、乾燥させたものは非常に心地よく緊張した筋肉を緩めてくれる香に変わる。後はクラッシュして、お茶箱に入れて保存される。気がついたら、掘り起しから3ヶ月の月日が経っていた。

芍薬の働きは、難解の傷寒論を理解する上で重要である。桂枝湯の芍薬の役割は何か。大青龍湯は、なぜ芍薬を除くのか等等、分からないことだらけである。芍薬作りをして身体で感じたことを参考に考えた自論を聞いていただければ幸いである。

 

芍薬の鑑別法

「冬に根をとって粗皮を去らず、日光にて乾燥したものを生乾と申します。所謂赤芍であって、太さ指のやうに能く肥つて硬く、外皮淡紅色を帯び内部白色を、呈せる長い棒状をなしてある味の苦く渋いものがよろしい。細いものや、短く折れたものや、内部の褐色に変じたもの及び虫食ひのあるものはいけませぬ。白芍と申すものは冬に根を採り直ちに粗皮を除いて、沸湯の中に投げ入れて煮沸すると、湯が黒色を呈するやうになります。それを引き揚げて乾燥したものでありますから効力は弱くなつてあります。」

(一色 直太郎著)

 

薬徴

結実して拘攣(結実はしこり。筋肉が引きつり痙攣すること)するを主治する。傍ら腹痛、頭痛、身体不仁(知覚麻痺)、疼痛、腹満、咳逆(咳嗽して気が上衝)、下痢、腫膿を治す                         (吉益東洞)

 

古方薬議

味苦平、血痺を除き、堅積(けんしゃく)(腫物の硬結せるもの)を破り、痛みを止め、中を緩め、悪血を散じ、蔵府の擁気(気がふさがる)を通宣し女人一切の疾、並に産前産後の諸疾を主どる。                         (浅田宗伯)

 

漢方フロンティア 

血を和し、筋中の血行をよくし、腹痛、腹満、頭痛、麻痺、疼痛、咳逆、下痢、癰膿、瘀血を治す

 

薬徴提要

血を和し、血行をよくし筋肉の機能を正常化し、収縮性の痛みを治す

 

雑草がまだ賑わいださない春先に、地面から血が吹き出すごときに芽を出す芍薬。その真赤な色からは、婦人の血証(出血、瘀血)を想像させ、その香りは、筋肉の緊張を緩める。芍薬は「血を和し、筋中の血行をよくする」血の剤であるが、実はその香りが、筋肉の緊張を緩めた結果、血行をよくし腹痛、腹満、頭痛、麻痺、疼痛、咳逆、下痢、癰膿、瘀血を治す、気剤の働きも持ち合わせていると考えている。「血中の気薬」と言われる川芎よりもその働き方は微かで、芍薬の働く頭痛は、川芎ほどではない。

「裏の筋肉の異常を正常化し」とは、例えば桂枝湯中の芍薬の働きを考えてみると、桂枝湯は解肌の剤と言われ、解肌とはだらだらした汗を、しっとりとした汗に変えて治病することで、傷寒論では、「遍身チュウチュウとして微似して汗有るもの益佳なり(微は、微行。似は嗣(つぐ)。全身からにじむような汗がひそかに継承しているものは一層よいのである)」とある。よって、傷寒論中の芍薬の働きは、裏(腸管)の異常な働きを(筋肉の収縮)を緩めることにより、相対的に肌表の気を引き締め、だらだらした汗をしっとりとした汗にする手助けをしていると考える。この考えは、西洋医学的に交感神経と副交感神経との関係に相当し、この理屈から小建中湯(桂枝湯中の芍薬を倍量し、膠飴を加えた)を精神疾患に応用してよい結果が出ている。このことをもう少し詳しく説明すると、ストレスにより肌肉が異常緊張している患家に小建中湯を服用頂くと、裏(腸管)の働きが正常化(肌肉の緊張が原因で、腸管が弛緩していたものを正常に動かす)され、相対的に肌表の気が緩みリラックス状態になる、と言う理屈である。鍼灸治療の表を緩ませ、裏を動かすものに近い。

症例1(小建中湯の症例)

39才の女性。生理不順、不眠症と精神不安。鬱的症状がひどく外出ができない日が増えてきた。息苦しさもある。不眠症、足の冷え、大便3日に1回、頭痛、頭重、唇口乾燥、首肩の凝り、動悸、息切れ、胃の痛み、腹満、腰痛がある。小建中湯に当帰芍薬散を兼用し、1か月で便秘、腹満が改善し空腹感が出てくる。不眠は6割よくなる。動悸はなくなり、寝つきが改善された。頭痛、頭重も良い。同薬方4か月で生理不順以外は、安定している。

 

次に大青龍湯が芍薬を除く理由を考えてみると、肌肉の緊張が強く毛穴は開かないため肌表に水気が渋滞し(熱を冷ますために水が集まる)その結果、血脈中が乾いている状態(汗出でずして煩躁する)が大青龍湯の証で、石膏は、血脈中の水気を保持させ、裏熱をとる。また、裏(腸管)の働きを亢進(刺激)することにより、肌表の緊張を緩め(気を緩めて下降鎮墜:漢方フロンティア)、発汗させる手助けをする。芍薬を除く理由は、肌表の緊張を増すものを除き、発汗の手助けをする。また、芍薬は収縮をとめてはいけない病位(陽明病)や、治癒するために心臓の収縮を強めなければならない心悸亢進(脈促)には使用しない。よって、苓桂朮甘湯の兼用方には、芍薬を含まない薬方が望ましい。

症例2(去芍薬の症例)

35歳の男性。仕事のストレスからくる動悸と脱毛の方に桂枝加龍骨牡蠣湯を2ヶ月ほど服用頂いたが、どうもすっきり直らない。思い切って同薬方より芍薬を除いてみること数日で明らかに動悸が治まった。考えるに或は桂枝甘草竜骨牡蠣湯の証があったかもしれない。

 

症例3(小建中湯から苓桂朮甘湯への症例)

不妊症歴3年の30歳女性は、抗精子抗体があり、中肉、下痢気味、唇口乾燥、肩、首の凝り、腹痛があり当帰建中湯3ヶ月で自然妊娠。妊娠14週目で動悸が始まり、「心中悸して煩する」の小建中湯で改善された。出産後3年、第2子妊娠11週目から再び動悸が始まった。小建中湯で効果なく、発作性心室性頻脈と診断された。動悸の頻度は増え脈拍130位まで上がる。苓桂朮甘湯に変更し15日、週3回の動悸が月2回に減り状態は安定。この方は元来とても繊細の方で始めての妊娠の際は神経が興奮し、芍薬の裏(腸管)の異常な働きを(筋肉の収縮)を緩めることにより動悸が改善されたが、出産後の疲れやストレスにより、徐々に心室性頻脈に移行していった為、今度は心臓の収縮を強めなければならない状況になり、芍薬を除いた苓桂朮甘湯が効を奏したと考察する。

芍薬は、甘草、桂枝、黄芩、葛根、当帰、枳実、朮、阿膠と二味の薬徴を組むが、傷寒論、金匱要略の薬方に置いては甘草との組み合わせが最も多く十六にもなる。その病位も陽明病以外は用いられている芍薬、甘草の二味の薬徴は、「筋中の血行をよくし切迫症状を緩和し、両腹直筋の異常緊張を緩めて急痛、腹痛、疼痛を治す」であり、経方の権與、桂枝湯の身疼痛から始まり、芍薬を倍量して虚満の桂枝加芍薬湯、膠飴を加えて「腹中急痛」の小建中湯と変化する。

芍薬・甘草の二味の薬徴

筋中の血行を良くし切迫症状を緩和し、両腹直筋の異常緊張を緩めて急痛、腹痛、疼痛を治す。

桂枝湯3・・・・・・身疼痛。           

小青竜湯3・・・・・喘息等の発作時には腹直筋が緊張する。

柴胡桂枝湯1.5・・・支節煩疼。心腹卒中痛。

四逆散10分・・・・柴胡・枳実に合して水血の攣急凝結を和し、腹中痛、下重を治す

桂枝加芍薬湯6・・・裏血が凝結して腹満し、ときどき腹痛。

小建中湯6・・・・・中気が虚憊して血分が通わず拘攣し腹中痛む。

  芍薬甘草湯4・・・・諸筋攣急。

烏頭湯3・・・・・・歴節疼痛。

芍薬甘草附子湯3・・攣急疼痛で寒冷の強い者。附子・甘草の効が大きい。

桂枝芍薬知母湯3・・諸肢節疼痛。ときどき腹痛。                              

温経湯2・・・・・・腹中攣急疼痛する者多し。

 

二味の薬徴図 芍薬・甘草

        

まとめ

我々の体は、自然治癒力を発動させるために、筋肉を収縮させ病邪を追い出そうとするが、その結果、瘀血や痛みを生じさせる。芍薬はその引きつりを弛緩させることにより苦痛を除くだけでなく、血流をよくして修復を速める。その為芍薬は収縮をとめてはいけない病位(陽明病)や、治癒するために心臓の収縮を強めなければならない心悸亢進(脈促)には使用しない。

むつごろう薬局 鈴木寛彦

(参考文献)

漢法ナビゲーション      田畑隆一郎著         源草社  

漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社       

漢方ルネサンス        田畑隆一郎著         源草社

傷寒論の謎          田畑隆一郎著         緑書房       

薬徴             田畑隆一郎著         源草社

よくわかる金匱要略      田畑隆一郎著         源草社       

漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社

漢方 第三の医学       田畑隆一郎著         源草社     

和漢薬の良否鑑別法及調製方  一色直太郎著         谷口書店

傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 

傷寒論講義研究        塚田健一           東邦大学

古方の薬味          根本義雄著

漢方腹証講座         藤平健著           緑書