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むつごろう畑の近況報告

静岡の薬草畑も少しずつ秋を感じるようになりました。芍薬の地上部は枯れていますが、当帰は、まだまだ成長しています。秋の収穫が楽しみです。


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新しい紫雲膏が出来上がりました。一日がかりで出来上がりました。店内は紫雲膏の香りで一杯です。この紫雲膏は、真岡の塚田先生から伝授頂いた海老塚流紫雲膏です。


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医学専門誌「漢方の臨床」への投稿

2017年10月04日

 2017年9月(第64巻・第9号2017)東亜医学協会の専門誌に原稿を投稿させていただきました。

内容は、前回から引き続き「畑の中の三陰三陽(少陰病)」です。

特にこの度は、少陰病と太陽病が表裏の関係にある理由を創造的な考察として書かかせて頂きました。独断と偏見の謗りは免れないと思いますが、ご興味のある方は是非お読みいただければ幸いです。

畑の中の三陰三陽(陰病)

 

 

少陰病のキーワード

だるくてすぐに横になりたい。項から背中全体にかけてイヤーな寒気(背悪寒)。熱のすり代わり現象(太陽病の実熱が、実体のない張子の虎のような熱に変わる)。直中の少陰病。おもらし下痢。麻黄附子細辛湯。真武湯。附子湯。四逆湯。                              

 

 

はじめに

霜月から師走にかけて、畑の動きは殆どなくなる。朝の畑は白く染まり、その中に黄色く枯れた当帰の葉っぱが目立つ。この時期、畑を支配するのは冷たい霜であるように、少陰病期を支配する‘寒‘は氷のようなものである。冷たい氷のように、病は凝り固まって動かなくなる。ここで登場するのが附子であり、さらに冷えて固まると烏頭の出番となる。負け戦の真只中は附子を中心として新陳代謝機能を挽回する、是が少陰病期の治療である。

 

 

少陰病の提綱

 

少陰の病たる、脈微細にして、但だ寐んと欲する也。

 とは、微少、少壮(さかん)。は、沈滞下降。脈微細は、微弱細少で、虚寒をいう。但だ寐んと欲するは、安眠を欲するに非ずして、実に身体萎靡(いび;衰えて弱まる)して疲労せるが如く、精神恍惚(ぼんやり)として恰も眠らんとするが如き状有るを言う)

 

 秋から冬にかけて、植物は地上部を枯らせて冬支度を始める。葉っぱにある栄養分を根っ子に移動させ、来年の発芽の準備をする。物静かな地上部とは裏腹に、地下部ではよく肥えた雑草の根が当帰や芍薬を包み込み、春先から始まる水取合戦は既に始まっている。傷寒論で言う、少陰病期である。少とは、微少、少壮の意義で、地上部の動きは微少で、地下部の動きは活発(少壮)である。

この時期、地上部は枯れるが、薬草園の柴胡、当帰、牡丹、芍薬は根が残り、翌年再び発芽する。ただ、その中で発芽しないものがある。これはもともと体力が衰えているものが寒さによってより弱り、雑草に栄養分を取られ、土中の雑菌や根切り虫等が決め手となって生命を絶たれてしまう。同じように、少陰病期は、病に抵抗する戦闘能力が落ちているため、突然に発熱が起こる。また病気の進み方も速い。よって急性疾患だけではなく慢性病でも突然病状が急変することがあるので十分気をつけていかなければならない時期である。

 

 

少陰病と太陽病が表裏の関係にある理由

 

「太陽病の病む部位は伏臥して上に出た部位、つまり頭項、項背、脊髄、腰より足までで、其の陰は少陰病の部位となる。」                   (黄帝内経)

 

「凡そ三陰三陽提綱の章中、脈と証とを兼ね挙ぐるは、太陽篇と本篇のみ。是に由て観れば、太陽は三陽の始めにして、少陰は三陰の本(もと)なるべく、又陽証の変化を太陽篇に於て論じ、陰証の変化を本篇に論ぜんとするが為なるべし。」(傷寒論講義:奥田謙蔵著)

 

少陰で茲に始まる者に麻黄附子細辛湯、同甘草湯、附子湯、真武湯、四逆湯有り、茲に陥るものに附子湯、呉茱萸湯、白通湯、四逆湯、通脈四逆湯がある    (傷寒論講義)

 

真の陰証は少陰より始まる少陰の正証は急激に進行する。故にその治は寒を治するに裏を温むるを法として、熱を治するには邪を去るを法と為す。温裏、去邪はその機甚だ微にして、死生反掌に在り。宜しく細心なる注意を以て之を処すべし。 (漢法フロンティア)

 

(太陽病篇に於いては、之を得て八九日と言い、十日以去と言い、十餘日と言う。本篇に置いては、初めて之を得てと言い、之を得て一二日と言い、之を得て二三日と言い、之を得て二三日以上と言う。此れ陰証は、陽証に比して其の病勢急激なるを示すなり。

(傷寒論講義)

 

陰証にて外の主たるを少陰とし、内の主たるを太陰とし、心中にして内外の中間、并に外より閉塞して、血熱の心に迫るを厥陰とするなり。          (比較傷寒論)

 

 四診(望・聞・問・切)の順番は、薬方を決定する上で重要である。脈診は最後にあたり、判断を欠いたときに、また確認の意味で脈をとったと考えられる。「少陰病、始めて之を得て、反って発熱し、脈沈なる者は、麻黄附子細辛湯之を主る。」少陰病は、但悪寒して発熱がないが、反って発熱している。始めに発熱すれば陽証(太陽病)で脈は浮である。ここで判断を欠いたときに、脈診で、微弱細小で沈を確認する。

太陽病と少陰病では、病のステージが同じで、違うのは病毒を迎え撃つ戦闘能力で寒熱の差も大きい。ただ、麻黄附子細辛湯の様に、少陰病に出てくる症候が恰も太陽病を思わせることがある。以下に少陰病と太陽病の区別し難い症候を挙げてみる。

イ)

発熱(麻黄附子細辛湯と桂枝湯)

身体痛み、骨節痛み(附子湯と麻黄湯)

ロ) 

 別紙〔太陽病(表)、少陰病(裏)相関の図〕

 

以上から、少陰病と太陽病が表裏の関係にある理由を考える前に、この二病位の共通点を探ってみると、提綱の章中、

1、少陰病と太陽病だけが、脈と証とを挙げている。

2、陰陽の病気の始まる時期である

3、病状が展開される元となっている。

4、病む場所が似ている。

5、傷寒論中、上部、表位に凝結する水気を和し、傍ら陽気を発する麻黄剤が使    われている病位。

6、病位が大きく異なる少陰病と太陽病に合方がある。(桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯)

以上、多くの共通点がある中での陰(裏)陽(表)の違いである。                              

また、これは創造的な考察で独断と偏見の謗りは免れないと思うが、傷寒論は少陰病から作られたのではなかろうか。不思議なことに、傷寒論の少陰病篇における上文には全て「少陰病」の文字から始まる。これを除いてみると、病状が、初日から始まることとなる。勿論、闘病力がある方は太陽病から進んでいくのであるが、傷寒論を作る上で、病人を助けられる最後の砦を重視したと思えば満更間違えではないと思う。(先急後緩は権宣の処置)付け加えると少陰病を代表する真武湯の語言、「真武=玄武」の方角は北であり、東洋思想は北から病気が入ることを最も恐れていたと考えると、やはり少陰病を一番に重視する意味は大きいのではなかろうか。   傷寒論における少陰病期の主なる漢方薬四逆湯―四肢厥冷、下痢、虚熱、体痛、脱汗、喘附子湯―悪寒、四肢寒冷、体痛、倦怠麻黄附子細辛湯―背悪寒、咽痛、咳、無気力桂枝附子湯―汗出て小便数、足だるく、身体疼煩桂枝加附子湯―手足冷え、汗、尿不利、麻痺                                   余談ではあるが、傷寒論はチフスの症状に似ていることは周知の通りであるが、チフスの名称は発生時に見られる高熱による昏睡状態のことを、ヒポクラテスが「ぼんやりした、煙がかった」を意味するギリシア語typhusと書き表したことに由来する。これは少陰病の提綱「但だ寐んと欲する也」の精神恍惚(ぼんやり)として恰も眠らんとするが如き状態である。この症状を治す目的から始まったと言えないであろうか。(ちなみにチフスは腸管からの侵入で始まる)よって、その重要性から、少陰病、太陽病、厥陰病、少陽病、太陰病、陽明病の順番で作られたと、考えてみた。少陰病の次に太陽病があえて比較するように書かれていたとしたら、それが、少陰病と太陽病が表裏の関係にある理由となる。

   

症例

 

症例1 腎不全(クレアチニン7.1)

 74歳の女性。透析7日前にご来店。中肉中背で顔色は浅黒く、血圧(最高170、最低92)、足のひえ、不眠、疲れやすく、耳鳴り、めまい、口渇、動悸、足腰の脱力感。夜間のトイレは2回。既往歴は20年前の腎盂腎炎と半年前のメニエル氏病。お薬手帳には、カルシウム剤とガストローム、ザイロリック、ラシックスが記載。舌質は青紫で臍上動悸あり。真武湯1日3回と、八味丸(20丸3回)を7日服用して6.5に下がる。病院からの水分制限(1日800cc)のため同時服用していただいた。小便の出が1000ccまで増えた。むくみが引いて、耳鳴りが小さくなった。2ヵ月後はクレアチニンが3.5になる。4ヵ月後に畑仕事が出来るまでになり、クレアチニンは3.4、血圧が最高150最低85までになった。今後、当帰芍薬散での治療も検討している。

この方以外にも、真武湯と八味丸の兼用で10人以上の透析前の方を改善できた。現在も二名の方(お二人とも75歳を超えている)が10年以上服用していて透析を免れている。

 

症例2 C型肝炎

 50才の女性。身長151㎝、体重60Kg。GOT90,GPT128。午前中の小便が近い(日中12回、夜間1回)。以前より高血圧で、2年前から降圧剤を服用。不安感、足のむくみ、胃痛、腰痛。黄耆建中湯(黄耆6g)と八味丸(60丸/分2)6ヶ月で、GOT33,GPT39に下がる。1年半後に、突然GOT116,GPT124に上昇。真武湯と人参湯朝晩でのみ分けていただく。3ヶ月後 GOT30,GPT24まで下がり、その後12年間真武湯1/2量を服用していただいている。数字は安定。

 

 

まとめ

 少陰病の提綱は、脈微細にして、但だ寐んと欲するである。太陽病との区別は脈微細であり、その治病原則は、冷えて固まっている病気を温散して治す。病む病位は、裏=消化管(腹中)であるが表を挟むことがある。これが、太陽病との表裏関係にある理由である。

また、傷寒論は、少陰病から作られたのではなかろうか。それは、生死の分かれ道となる大切な病状期であるからであり、その比較として太陽病があるならば、そこに表裏の関係が成り立つと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考文献)

きぐすり曼荼羅        田畑隆一郎著         源草社 

漢方フロンティア       田畑隆一郎著         源草社           

漢方サインポスト       田畑隆一郎著         源草社

比較傷寒論          田畑隆一郎著         源草社

傷寒論講義          奥田謙蔵著          医道の日本社 

 

 

 

 

            静岡県静岡市葵区東草深町22-1 むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦