現代薬徴「地黄」「麦門冬」

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不妊症 漢方薬/不妊症の漢方薬はむつごろう薬局
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現代薬徴「地黄」「麦門冬」
沼津市・むつごろう薬局 白井憲太郎

古方の雄"吉益東洞"の偉業は、漢方を傷寒論に還したことと、薬徴を遺したことであろう。薬徴の性は単純明快で、「薬は皆毒なり。而して、病も亦毒なり。薬毒、病毒に当たりて瞑眩す。瞑眩すれば、乃ち病_ゆ。」と。東洞先生は、「人参で元気になるのは、心下で凝縮した水毒が除かれることで食欲がついて元気になり、附子で身体が温まるのは、深部に進入した水毒が遂い払われることで血が通じ温まる」と考えた。要は身体が元気になるのも、温まるのも、毒が除かれた結果起こる二次的現象として捉え、薬=補剤ではなく、薬=毒として薬徴を導き出していった。おそらく「地黄」や「麦門冬」もその例外ではないだろう。しかしながら薬徴での地黄の能は、血証及び水病を主治するなりと表現があいまいで、他薬にみられる肌表の水を主治すや急迫を主治すのような切れ味はなく、イメージが湧きにくい。また、地黄に限らず、防已の水を治すや朮の水を利す等も同様で、さらに麦門冬等に至っては、何の能すら描かれていない。

東洞先生が苦心の末、7回書き換え、それでも尚納得が行かなかったと云われている眠れる大作"薬徴"・・・。その未完成さは、傷寒論と同様、偽がないことの裏付けでもあり、250年経った今でも古方家の感性を刺激して止まない。東洞流の伝承を望む一古方家として、及ばずながら薬徴を追随してみたい。

○地黄
脈中の水を主治す。故に、脈結代、小便不利、小便自利、漏下、下血、煩熱、肌膚甲錯等を兼治す。

考徴
1.炙甘草湯証に曰く、「脈結代し、心動悸するは」「脈結し、悸し」と。脈結代するとは、脈中に水毒があり、それが結び滞っていると解釈できないだろうか。また、心動悸とは、炙甘草湯には桂枝甘草湯の方位があり、脈中の水毒が上衝していると考えられる。
2.三物黄_湯証に曰く、「四肢煩熱に苦しみ、但だ煩する者」と。煩熱とは、脈中の水毒が血熱の放散を妨げることで生じていると考えられる。また、血熱が四肢に生じやすいのは、四肢には脈が多く集まっていることと、他の部位に比べると脂肪が少なく、脈が肌表まで出ているため、血熱を感じやすいのではないだろうか。
3.八味丸証に曰く、「小便不利」「消渇、小便反多」「婦人病、煩熱」「転胞病、利小便則癒」と。八味丸証では、「虚労、小腹拘急し、小便不利する者」、「短気し、微飲有るは、小便より之を去るべし」、「転胞病、小便を利すれば即ち癒ゆ」とあるが、これらは皆、小便より水毒を去りて病を治している。では、水毒はどこにあるのかということになるのだが、金匱要略の消渇病に、「消渇、小便反って多く、飲一斗を以て、小便一斗なるは、八味丸之を主る」とある。消渇の病は通常、水を飲んでも飲んでもそれが汗等に変わり(五苓散証や白虎加人参湯証など)、小便は不利するのだが、八味丸証に限っては、反って小便が多くなる。これは脈中の水毒が、飲んだ水の肌表への運行を妨げ、飲めども飲めども水は肌肉へ入らず、小便へと化していると考えられる。八味丸証(他の地黄証も含む)に、肌表が枯燥している者が多いのも、このためだろう。また、婦人雑病篇で、煩熱とあるが、これは三物黄_湯と同じく、脈中の水毒が血熱の放散を妨げていると考えられる。
4._帰膠艾湯証に曰く、「漏下」「下血」と。黄土湯証に曰く、「下血」「吐血」「衂血」と。漏下、下血、吐血、衂血とあるのは、脈中に水が多いため血が粘性を失い、出血しやすい状態にあると考えられる。
5.大黄シャ虫丸証に曰く、「肌膚甲錯」と。肌膚甲錯とあるのは、脈中の水毒が血(水)の肌膚への運行を妨げていると考えられる。

弁誤
後世では、地黄の能を補血と云い、血虚を補うと考えているが、いかがなものだろうか。もしそれが本当なら、血虚でない人が服用した場合、多血症になってしまうのだろうか。また極論を云えば、地黄を服用していれば、食事を摂らなくてもいいということになってしまう。やはり、そうではなくて、地黄の補血作用や増血作用は、飽くまで脈中の水毒が捌かれた結果、血が濃くなったように観える二次的現象と捉えるのが妥当ではないだろうか。また、大塚敬節先生の創作された七物降下湯の適応証に、最低血圧の高い者に良いとあるが,このことからもまた、地黄が脈中の水を捌いていることがよく解かる。

○麦門冬
咽喉を刺潤す。故に、大逆上気、咽喉不利、気逆、涎唾(粘痰)、唇口乾燥等を兼治す。

考徴
1.麦門冬湯証に曰く、「大逆上気」「咽喉不利」と。竹葉石膏湯証に曰く、「虚羸」「少気」「気逆」と。この二証では、心下に毒が凝縮し、心下から咽喉にかけてと、心下から腹にかけての血の運行が妨げられている。その結果、咽喉から腹にかけて滋潤を失い、虚気を生じ、それが上って「大逆上気」「咽喉不利」「気逆」を呈している。この二方では、心下の凝毒を人参で砕き、麦門冬は上部(心下から咽喉にかけて)を、粳米は下部(心下から腹にかけて)を刺潤し、毒を下(小便・大便・屁等)へと捌いている。
2.炙甘草湯証に曰く、「肺痿涎唾多く」と。金匱要略に、肺痿の病たる「熱上焦にある者」「津液を亡ぼす」「膿血を_唾し」とあるが、これらのことからも、麦門冬が上部の燥を刺潤し、毒(膿血も含む)を下へと捌いていることが分かる。また、医聖方格に曰う「粘痰を治す」と。咽喉から肺にかけての呼吸器を麦門冬が刺潤し、粘痰を水溶性にして体外へと捌いている。
3.温経湯証に曰く、「唇口乾燥」と。この証では、心下の毒(人参)と少腹の_血(牡丹皮)が血の上部への運行を妨げ、唇口乾燥を呈している。麦門冬が刺潤する。
弁誤
後世では、麦門冬の能を滋潤と云っているが、これでは麦門冬が身体を養い潤しているような意味合いになってしまう。麦門冬=虚証の薬と捉えてしまっては非常に危険である。東洞先生の、薬は皆毒に倣えば、麦門冬も飽くまで"毒"である。麦門冬をかじると、唾液があふれる。これは、毒(麦門冬)を速やかに分解・排泄させようとする人間の防御本能である。咽喉が潤うのは、麦門冬の刺激によって唾液分泌が亢進し、その結果として起こる二次的現象と捉えるのが妥当であろう。蛇足にはなるが、白米や砂糖などの精製食品が横行する現代人に唾液等の分泌障害が起こり、日に日に麦門冬証が増えていると感じているのは私だけであろうか。 

【結論】間質性肺炎に炙甘草湯が効を示した2例であるが、これも薬徴をよく読み、薬=毒という概念をしっかりと念頭に置きながら処方したがゆえの結果である。間違っても麦門冬=虚証の薬などと捉えてはならない。もし患者さんの体力が、麦門冬(毒)の刺激に対して、唾液の分泌を起こすほど残っていなかったら、反って間質性肺炎を助長してしまうことにもなりかねない。こういう場合は、まず最初に、四逆湯類の薬方を使って、患者さんの深部の水毒を遂い払い、体力を回復させることを優先させなければならない。

今、私達現代人は、相当の体力の低下を来たしている。運動不足はさることながら、冷飲冷食、精製食品、農薬・化学肥料等で作られた野菜、抗生物質等の乱用・・・など目にも余る状態である。もちろんそのような軟弱な身体で漢方薬を服用し、証が適さなかった時のダメージには計り知れないものがある。現代漢方家は薬徴をよく読み、薬草の持つ性質を一つ一つしっかりと理解して治療に望まなければならない。そしてできれば、自分で薬草を育ててみることも大切である。畑の麦門冬には虫は付かない。鹿や猪も餌にしない。畑にいると、何が栄養になって、何が毒になり、また何が薬になるかということを虫や動物達が教えてくれる。そして、書物では学べないこういった野性的な感覚を身に付けていくことも、漢方家としての資質を高めるうえでとても大切なことであると私は信じている。


参考文献
(1)小川新校閲・横田観風監修:吉益東洞大全集全4巻(たにぐち書店)
(2)田畑隆一郎著:漢法ルネサンス(源草社)
(3) 田畑隆一郎著:よくわかる金匱要略(源草社)

(薬剤師:〒410‐0822沼津市下香貫下障子3142)

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今月のおめでた

むつごろう畑の
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  • むつごろう畑が銀景色に包まれました。これで天日干し中の当帰の薬効が高まるかな?それにしても綺麗です。(H24年1月12日撮影)

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トピックス情報

  • 毎日寒い日が続いています。比較的暖かな静岡ですが、駿府城薬草園はとても静かです。

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