"漢方"で健康に生きる
~はじめに~ "漢方"とは、自然で採れる草根木皮などを使って病気を治す薬草療法です。漢方の特徴は、病気を部分的に見るのではなく、身体全体として見ていくことにあります。例えば、アトピー性皮膚炎などの皮膚病は、西洋医学では"皮膚の病気"として捉えていきますが、漢方では"身体全体の病気"として捉えていきます。ですので、「普段何を食べていますか」とか「お小水やお通じは何回いきますか」といったような生活模様や、その方の顔色、しぐさ、性格などのすべてを見ていきます。そしてその方の体質に合った漢方薬を調合し、食事の摂り方や生活習慣などのアドバイスをして、病気になりやすい体質そのものを改善していきます。これは例えば、人間の身体を"木"に例えるなら、葉っぱが枯れた時に農薬を散布して治すのではなく、土壌に落ち葉や籾殻(もみがら)などを入れ、土壌そのものを改善していくことで"木"を健康な状態にしていくような感じです。
~病気になりやすい体質とは~ 漢方では、病気になりやすい人は、身体の中に"毒"が溜まっていると考えます。ただ、この場合の"毒"とは、細菌や有害物質のようなものではなく、私達が普段平然と摂っています"水"や"食べ物"のことを指します。もちろん私達が生きていくためには"水"や"食べ物"などの栄養は必要不可欠な物なのですが、それは摂りすぎたり、身体の中で使用されずに古くなったりしますと、それは"毒"へと変わります。漢方では、これを大きく"血毒""水毒""気毒"の三つに分けて考えていきます。
- 血毒(けつどく)とは・・・お血(おけつ)とも言います。身体の中に溜まっている"古い血"のことを言います。血毒体質の人は、顔色が黒ずんでいたり、アザやシミができやすかったり、便秘、肩こり、静脈瘤、痔、吹き出物などができやすかったりします。また、血毒が身体に溜まりやすい原因としましては、肉食や油物が多かったり、チョコレートやケーキなどの脂肪分や糖分が多かったりですとか、運動不足などがあります。血毒を治す漢方薬には"桃核承気湯(とうかくじょうきとう)"や"大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)"などがあります。
- 水毒(すいどく)とは・・・身体の中に余分な水が溜まった状態のことを"水毒"と言います。水毒体質の人は、めまい、むくみ、耳鳴りなどの症状が出たり、ジンマシンや鼻炎などのアレルギーを起こしやすかったりします。また、人によっては、ひどい冷え性に悩まされたり、神経痛や腰痛、ひざの痛みなどが出ることもあります。また、水毒が身体に溜まりやすい原因としましては、果物やヨーグルト、アイスクリームなどの身体を冷やす物を摂り過ぎたり、甘い物を摂り過ぎたりなどが考えられます。もちろん"運動不足"などで新陳代謝が悪い人も、水毒体質になりやすくなります。水毒を治す漢方薬には"当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)"や"防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)"などがあります。
- 気毒(きどく)とは・・・"気"とは、元気、活気、天気、などにも使われていますが、目には見えない"生命エネルギー"のようなものです。健康な状態ですと、この"気"は下腹の辺り(丹田)に集まっています。私達が普段"気"が落ち着くと言ったりするのは、まさにこの状態です。しかしながら、ストレスや悩みなどがありますと、この"気"は不安定になり、身体のあちらこちらへと移動したり、どこかでよどんで滞ったりします(気毒)。例えば、いつもイライラとしている人は、"気"が頭に上っているため、夜になっても目が冴え、"不眠症"になったり、逆にいつもマイナス思考で"気"が落ち込んでいる人は、"うつ"や"やる気の低下"などの症状が出たりします。漢方では、イライラを和らげる時には"加味逍遥散(かみしょうようさん)"という薬を使ったり、滞った"気毒"を巡らす時は"半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)"という薬を使ったりします。
~徳川家康に学ぶ"健康な生活"とは~ 皆さん、徳川家康が"健康オタク"であり、"漢方オタク"であったというのは御存知でしょうか。私共むつごろう薬局の静岡店は、家康が晩年暮らしていた駿府城の外堀の角にあるのですが、その辺りの町名は、"草深町(くさぶかちょう)"と言います。その町名は、家康が薬草栽培をしていたことにちなんで付けられたそうです。また、家康は、自分で漢方薬を調合していたと言われ、その腕は"医者以上だった"とも言われています。 そんな家康が、健康に生きるために"漢方"と共に気をつけていたのが"食事"と"運動"であります。- 食事の大切さ・・・家康の食事は、"麦めし"や"麦みそ"などが中心で、他の大名等と違い、"粗食"を好んでいたと言われています。白米よりも硬い"麦めし"を好んだ理由は、"よく噛んで食べる"ことが身体に良いということを知っていたからです。現代人の1回の食事で噛む回数は、約620回と言われていますが、家康は1回の食事で、約1460回噛んでいたのではないかと考えられています。食事の時によく噛めば、唾液がたくさん分泌され、消化を助けるのはもちろんですが、食事に含まれる有害物質(現在なら発ガン物質など)を解毒したり、細菌などの微生物を殺菌したりします。また、"麦めし"や"玄米"のように精白されていない食材は、私達が生きていくために必要なビタミンやミネラルなどが失われておらず、繊維質も豊富なために、大腸の働きも活発になります。
逆に、今の若い人達や子供達は、ジュースやスポーツドリンクでお腹をいっぱいにしたり、柔らかいパンを好んだりしますが、これでは、唾液の分泌が低下したり、腸の働きが悪くなったりします。また、身体の中に毒素(血毒や水毒)を溜めやすくなるため、アトピーや喘息、花粉症などのアレルギー体質にもなっています。 - 運動の大切さ・・・食事と共に、家康がとても気を付けていたのが"運動"です。家康は"鷹(たか)狩り"を非常に好み、野山をよく歩き、天下を取ってからも欠かさなかったと言われています。
人間の身体は、"下半身(生殖器)"から老化すると言われております。ですので、逆に考えれば、"下半身"を鍛えることで、老化を防げると言うことになります。鷹狩りを習慣にしていた家康が、最後に子供を授かった年齢が61才で、亡くなったのが75才です。この年齢は、現代に置き換えると、76才で子供を作り、93才まで生きたことになります。今からでも遅くはありません。皆さんもしっかりと歩いて"下半身"を鍛えましょう。
~身土不二(しんどふじ)とは~ 皆さん、身土不二(しんどふじ)という言葉は聞いたことがありますでしょうか。身土不二とは、身(=身体)も土(=住んでいる土地)も一緒だという意味です。これは、私達人間も"自然の一部"であり、自分達が住んでいる土地で、その時季(旬)に獲れた物を食べるのが、最も身体に良いということです。例えば、エスキモーのように非常に寒い地方の人達は、そこに住んでいる脂のたっぷりのったアザラシなどを食べて、脂肪を蓄え寒さを凌(しの)いでいます。逆に、とても暑い南国の人達は、その土地でたくさん獲れるフルーツを食べ、暑さを凌(しの)いでおります。もし、エスキモーの人達がフルーツを食べれば、身体はたちまち冷やされ死んでしまうでしょうし、南国の人達が脂肪を摂り過ぎれば、たちまち病に冒されるに違いありません。 では、私達現代人の食生活はどうでしょうか。今の時代は、スーパーへ行けば、冬でも身体を冷やすトマトやキュウリ、ナスなどが置いてありますし、グレープフルーツやオレンジ、キウイなどの身体を冷やす南国の果物も1年中置いてあります。また、高脂肪の揚げ物や肉類なども簡単に手に入りますし、若い女の子や子供達は、アイスクリームやチョコレートなどの砂糖食に目がありません。今の私達の生活は、経済的に豊かになり、いつでもどこでも何でも簡単に手に入るようになったのですが、それは逆に、身土不二、すなわち自然からどんどんかけ離れ、新たな病を引き起こしているように思えてなりません。やはり私達は、自然と共に生活し、住んでいる土地で、旬に獲れる物を食べていくことこそが、最も健康的な生き方だと言えます。- 春に起きやすい病気と養生方・・・春は、新緑が芽吹く時季ではありますが、それと同時に、病気の芽も出やすくなります。冬場におとなしくしていた"毒素"が春の陽気と共に芽吹き、吹き出物、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、めまい、耳鳴り、頭痛、不眠、痔、などが悪化します。新緑の芽である蕗(ふき)、菜の花、三つ葉、竹の子などには、身体に溜まった毒素を排出させてくれる働きがあります。アトピーや鼻炎は、甘い物やジュース等の摂り過ぎで悪化しますので、なるべく控えましょう。めまいや耳鳴り、不眠などは、自律神経が過敏になって起こります。日頃から呼吸を深くし、しっかりと運動などを行なって、精神を安定させておくことが大切です。また、飲酒は痔を悪化させますので、飲み過ぎに注意しましょう。
- 夏に起きやすい病気と養生方・・・6月頃は、湿気が強く、喘息、リウマチなどが悪化します。7月8月に入ると、暑さのために、胃腸が弱い人は、食欲減退、下痢などになり、神経質でイライラしやすい人は、肝臓が疲れて、ジンマシンや帯状疱疹などが出ることがあります。この時季に獲れるスイカ、トマト、キュウリなどは、ほてった身体を冷やし、疲れをとってくれます。また、汗で失われたカリウムなどのミネラルも豊富に含まれています。夏場は、夏ばてしないように鰻や肉などの高タンパク質も必要です。ただ、冷たい物(氷の入った飲み物やアイスクリームなど)の摂り過ぎは、秋になって神経痛や下痢、冷え性などを引き起こしますので注意しましょう。
- 秋に起きやすい病気と養生方・・・秋は、大気の冷えと同時に、食欲が出てきます。サツマイモ、栗、松茸などが採れ、サンマやサバにも脂がのってきます。この時季は、寒さに備えてたくさん食べ、脂肪を蓄える時季ではありますが、揚げ物や甘い物を摂り過ぎると、身体に"毒素"が溜まって、翌年の春に病気が出ますので注意が必要です。また、春と同様、季節の変わり目ですので、不眠やめまい、高血圧などの自律神経系の病気が悪化します。呼吸を深くして、精神を安定させることが大切です。
- 冬に起きやすい病気と養生方・・・冬は大気が冷えるのと同時に、乾燥が強まります。お年寄りの方やアトピーなどで肌が乾燥しやすい人は、肌がカサカサして痒みが増します。お風呂などにゆっくり入って身体を温めることが大切です。食事は、鍋物などの身体を温める物が中心になります。ニンジン、ダイコン、ネギ、ショウガ、ハクサイなどは身体を温めてくれます。また、冷え性で頻尿や膀胱炎などになりやすい人や神経痛、腰痛、膝の痛みなどがある人は、ミカンや柿などの果物を食べ過ぎると、症状が悪化しますので注意が必要です。
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