60歳女性 身長154cm 体重48kg
去年の暮れより首の辺りに痒みが出る。病院で抗アレルギー剤(ジルテック)をもらい、飲むと軽減するが、完全には治らない。また、5月あたりよりひどくなり始める。体質的には、疲れやすくて神経質なタイプ。首から顔にかけて汗をかきやすい。また、人に気を使いやすく、取り越し苦労も多い。大小便に異常はなく、食欲あり。
漢方薬で、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を処方。この薬は、肝臓の働きを助け、解毒障害による皮膚の痒みを改善する。飲み始めて2~3日で少しひどく出たが、その後ジンマシンが消失。約一ヶ月で廃薬。
58歳女性 身長157cm体重60kg
3年前より手のひらと足の裏に湿疹ができ、病院へ行くと掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断された。病院ではステロイド剤を処方されしばらく塗っていたが、肌が次第にカピカピに乾き、分厚く硬くなった。また、夜になると手のひらと足の裏が熱くなり、痒みが増し、かくとぽろぽろと皮が剥ける状態になる。約1年間ほどステロイド剤を塗ったが改善が見られず漢方薬を試してみようとご来局された。
体質的には、瘀血(おけつ)体質で、血糖値がやや高い(ヘモグロビンA1Cが6~7%)。のどの渇きがあって、手のひらと足の裏は赤く熱を持っている。舌を見せてもらうと、白い苔がたっぷりとついている。
漢方ではこういう状態の体質を"血熱(けつねつ)"と呼んでいる。これは、血液に"熱"がこもっている状態である。閉経後の女性や子供によくみられる。漢方では血熱には地黄(じおう)という薬草をよく使う。この方の場合にも、地黄の配合された三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)を処方した。また、外側から皮膚の再生を促す紫雲膏(しうんこう)を塗ってもらうことにした。初めの一ヶ月は、ぽろぽろと皮がむけることも多かったが、二ヶ月ぐらい経った頃から、新しく出てくる膿胞が少なくなり徐々に消失していった。その後約一年で根治し、再発はみられていない。
30歳女性 身長160cm 体重58kg
一年前より、顔、首のまわり、背中、胸など(主に上半身)に痒みが出る。患部は赤く、痒みが強い。また、肌はカピカピに乾いており、フケも多い。病院で、ステロイド剤やビタミン剤などを処方されたが改善がみられなかった。
体質的には、便秘気味(3~4日に1回)で、ニキビやイボなど肌が荒れやすい。また、スナック菓子や菓子パンなどをよく食べている。舌の裏側を見せてもらうと、紫色の静脈が浮き出ていた。他に、仕事上での不満などが多かった。
漢方では、脂漏性皮膚炎を、脂の"毒"と考えている。これは、スナック菓子に含まれる油や菓子パンなどのクリームやチョコレート、あんこなどが体内で過剰栄養となって"毒"となる。脂の"毒"は、肝臓に溜まる。肝臓で処理できなくなったものが皮膚に、ニキビや皮膚炎になって現れるのだ。そしてこの肝臓の脂毒を排出する働きがあるのが柴胡(さいこ)という薬草である。まずこの方には、柴胡の入った加味逍遥散(かみしょうようさん)という薬を処方した。すると、飲み始めて10日経った頃から皮膚炎はかなりひどくなり、体の上半身が真っ赤になった。漢方ではこれをメンゲンと呼ぶ。メンゲンとは、体が毒を排出する際に起こす好転反応である。その後、しばらくしてから赤味はおさまり、約半年の服用を経て根治に至った。
一時的に真っ赤になったのは、脂毒が薬草の力を得て、一気に燃焼したのであろう。
29歳男性 身長170cm 体重57kg 既往歴 小児アトピー 小児喘息
一年前よりアトピーが悪化。部位は、ほぼ全身(頭、顔、背中、腹、腕、太もも、首のまわり、肘の内側、膝の裏)。全身は、ステロイド治療中。顔にはプロトピック軟膏使用。小児期にもステロイド使用跡有り(肌の黒ずみとかさつき)。
顔色が浅黒かったため、食事内容を伺うと、週に3~4日カップラーメンを食べているとのこと。漢方ではこれを"食毒"と呼ぶ。さらに、缶ジュース1~2本/日。こういう場合、食毒を解毒する漢方薬を処方する。柴胡清肝湯を2週間処方。メンゲンを伝える。メンゲンとは、アトピー(炎症)を抑えるのではなく、その原因となっている毒を皮膚に発散させることをいう。そのため、アトピーは一時的に悪化する。場合によっては、リンパ液が噴出す場合や発熱などを伴うこともある。この方もやはりひどくなり、外側から紫雲膏(しうんこう)を塗ってなんとかがまんしてもらうことにした。
その後、約3ヶ月ばかりひどい状況が続いたが、次第に毒が抜け、回復し始める。漢方薬は柴胡清肝湯を続けてもらい、カップラーメン及びジュースは断っていただいた。そして痒みが減ってきたところで、なわとび1000回/日を併用してもらうことに。汗をかくことで、一時的に痒みは増すが、皮膚の新陳代謝を促し、肌が急速に回復に向かう。
その後、漢方薬を服用し始めて約2年で治療終了。食事だけは気をつけてもらうようアドバイスをし、それからは、一度もアトピーはでていない。
アトピーを火事(炎症)に例えた場合、火事(炎症)を消火器(ステロイド)で消しても消しても出てくる場合は、火元である"食毒"を排除させていく必要がある。
- アトピー性皮膚炎と漢方薬
- ニキビと漢方薬
- 乾燥肌と漢方薬
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- シミと漢方薬
- 掌跡膿胞症と漢方薬
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